1971年アメリカ作品。『猿の惑星』のシリーズ第3弾。監督は『別れのこだま』『ファイナル・カウントダウン』などのドン・テイラー、主演は1作目『猿の惑星』から出演しているロディ・マクドウォール、キム・ハンターなど。2作目の『続・猿の惑星』で一区切りついた感がありましたが、今作では、科学者の猿のジーラ、コーネリアスなどが宇宙船に乗って現代の地球にやってくるという設定で、全く新しい展開になります。ストーリー展開には大きな意外性もなく、予算不足の為か、SF映画としては地味ですが、このシリーズで最も風刺の効いた作品で、1970年代の人間に向けた皮肉が、そのまま現代の私たちにも向けられているようです。
1作目の舞台が紀元3978年でしたが、この作品では、ジーラ、コーネリアスたちの乗った宇宙船がタイムスリップして1973年の地球にやってきます。『1作目で湖に沈んだ宇宙船を誰が、いつ修理したのか、修理できる技術があるのか?』という、矛盾点を無視してみれば、『猿の惑星』シリーズの新たな流れを作った作品として、それなりに楽しめます。このシリーズ中、最も強烈な人類に対する批判が込められた作品として観ると、その点だけでも価値があるかもしれません。自分の評判を落とさないような政策をしようとする利己的な政治家、問題が山積みなのに、いつまでたっても行動を起こそうとしない人間、そして、客観的に観て、善人と呼べる人間が極端に少なくなってしまっている人間社会への痛烈な批判は、今観ても目が覚めるようなリアリティがあります。この製作者の知性だけでも、ちょっと評価が高くなります。
人類に残された時間は少ない
人類の未来の為に、ジーラとコーネリアスを殺そうとする憎まれ役のハスレイン博士のセリフが最も印象に残ります。いつまで経っても問題解決の為に行動を起こそうとしない人間の怠惰な姿勢に怒りをぶつけるハスレイン博士の気持ちは、地球温暖化の問題を無視しつづけている科学者に対するアル・ゴア氏の気持ちに似ているような気がします。アル・ゴア氏の映画『不都合な真実』の中で、熱湯に入れられたカエルは、熱さのショックで飛び出すが、ぬるま湯につかってジワジワと温度をあげられると逃げ出さずに死んでしまうという話を思い出しました。温暖化の問題だけでなく、あらゆる問題点の解決に消極的な世界の指導者たちの姿を見ていると、本当に人類に残された時間は少なくなっているんじゃないかと、ゾッとします。