１９６６年、ニュージャージー州、ハリケーンのニックネームを持つボクシングのウェルター級チャンピオン、ルービン・カーターが強盗殺人事件の犯人として逮捕される。人種差別の強く残る時代だった事もあり、充分な審議もされないまま、翌年終身刑を宣告され、刑務所に収監されてしまうが、ルービンは反骨精神の強さで、無罪を主張した自伝を執筆する。１９７４年に出版された彼の自伝は反響を呼んで、ボブ・ディラン、モハメド・アリなど多くの有名人が釈放運動に参加したものの、２年後の再審でも有罪が確定し、冤罪を晴らすことはできなかった。しかし、カナダに住むレズラという黒人少年が、その自伝に感動し、ルービンに手紙を送ったことから、ルービンの人生は大きく変わって行く・・・。

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　１９９９年アメリカ作品。『夜の大捜査線』『ジャスティス』など社会派の得意なノーマン･ジュイソンが監督、主演は『マイ･ボディガード』『デジャヴ』などの主演で有名なデンゼル･ワシントン。冤罪で投獄されたボクサー、ルービン・カーターの波乱の人生を描いた実話。公民権運動など、黒人に対する差別が根強く残っていた１９６０年代のアメリカの実写映像を交えながら、差別に対して立ち向かった黒人ボクサーと、彼を支え続けた友人たちの感動の物語。

　まず第一に、主演のデンゼル・ワシントンの存在感が凄い！映画の最後にルービン･カーターの実写映像が出てきますが、多分、ルービン･カーター本人より凄みがあります。モハメド･アリの伝記映画『アリ』で主演したウィル･スミスと比べても、完全に勝っています。こういう圧倒的な存在感は、ブルース･ウィリスなどと同じで、演じようとして演じられるものではなく、本人の人間性として培われてきた凄みでしょう。そして、存在感だけでなく刑務所に収監されて分裂症になってしまうなどの繊細な演技も際立っています。よくある伝記映画のように、実在の人物の物語を知るというだけでなく、彼の為に立ち上がった人々の人間性、そのドラマには本当に感動させられます。冤罪によって投獄されたボクサーの物語という暗いテーマの為、一般的な人気は高くありませんが、伝記映画としては最高傑作のレベルの作品だと思います。

悪い白人ばかりじゃないぞ

　白人の刑事によって冤罪で投獄され、白人の陪審員によって有罪判決を受けたルービンは、白人全体を憎んでいます。しかし、刑務所の仲間に、いい白人もいるとアドバイスされ、白人の仲間たちの協力によって人生が一変していきます。私もそうですが、●●人だから嫌いだとか、●●県民だから嫌いだとか、ひとくくりに考えて差別してしまうと、最初から偏見、差別を持って人間に接してしまう事になり、いい人間に出会うチャンスを自分でつぶしてしまうのかもしれません。

憎しみで投獄され・・・

　白人刑事の執拗な追及、悪意によって投獄されたルービンは、怒りを糧にして、その反骨精神でボクサーとして成功しますが、自らの怒りによって自分を追い詰めていた部分もあるのかもしれません。映画の終盤で、その事に気づき、何が自分を救ってくれるのかを悟るシーンは、すべての人の人生についても参考になると思います。

　《　検索用　》
デンゼル・ワシントン
ヴィセラス・レオン・シャノン
デボラ・カーラ・アンガー
リーヴ・シュライバー
ジョン・ハンナ

 

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