大いなるワンパターン
オーストラリア出身のバンドで、1975年に『ハイ・ヴォルテージ』でレコードでデビュー。メンバーはアンガス・ヤング(G)、マルコム・ヤング(G)、ボン・スコット(Vo)、フィル・ラッド(Ds)、マーク・エヴァンス(B)の5人編成でした。このデビューアルバムは、マイナー契約で発売はオーストラリアのみでしたが、1976年に大手レコード会社のアトランティック・レコードと契約、イギリスを含むヨーロッパツアーを行い、コンスタントにアルバムも発売しますが、アメリカでの成功は1979年に発売された6枚目のアルバム『地獄のハイウェイ』のヒットからでした。『地獄のハイウェイ』は、アメリカのヒットチャート17位まで上昇するヒットになりますが、1980年にヴォーカリストのボン・スコットが死亡。ヴォーカリストを失ってしまったAC/DCは解散の危機に直面するが、新ヴォーカリストとしてブライアン・ジョンソンを迎えて、『バック・イン・ブラック』を発表、このアルバムは、彼らの長いキャリアの中でも最大のヒットとなり、全世界で4300万枚という驚異的なセールスになっています。このアルバムのタイトル曲は、『スクール・オブ・ロック』などの映画でも使用されているので、ロックファン以外でも聴いた事があるのではないでしょうか。続く『悪魔の招待状』は、全米ナンバー1ヒットになり、世界的なバンドへと上り詰めて生きます。
バンドのオリジナルメンバーであり、重いビートでAC/DCのサウンドの個性を担っていたフィル・ラッドがクビになり、後任のドラマーとして、サイモン・ライトが加入、その後サイモン・ライトもバンドを脱退し、元ザ・ファームのクリス・スレイドがドラマーとして加入します。クリス・スレイドのドラムは、AC/DCの歴代ドラマーの中で最もパワフルでテクニカルだった為、バンドのサウンド、演奏力は、この頃がピークだったという評判も多く、ライブの名演『ライブ・アット・ドニントン』も、このメンバーで収録されています。1994年、マルコム兄弟の旧友でもあるドラマーのフィル・ラッドがバンドに復帰、バンドの完成度よりも友情を優先したようです。今でもオリジナルメンバーでの活動をつづけ、次々に大ヒットアルバムを発表しています。
長いキャリアを誇るバンドですが、その音楽性は一貫していて、ブルースをベース、強いリフのシンプルロックというスタイルをデビュー当時から守っています。アンガス・ヤングのギターは、技術的にはテクニシャンと言えるものではありませんが、エアロスミスのジョー・ペリーや、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジなどと同じように、シンプルで印象的なリフを作り、ブルースフィーリングから外れない心地よいギターソロを弾いてくれます。ロックバンドのほとんどが、キャリアが長くなると、音楽的な変化、進化をともない、ファンを戸惑わせるものですが、AC/DCの場合は、全く変わらない音楽性を貫いているので、ワンパターンとも言えますが、ファンの期待通りのアルバムを発表し続けていて、昔からのファンを失わないという点で優れているのかもしれません。今までの全世界のアルバム総売り上げは1億5000万枚以上になり、ロックの頂点を極めたバンドと言えるかも知れません。またセールス以上に、多くのバンドに大きな影響を与えたという点でも偉大なバンドです。
『スクール・オブ・ロック』という映画で主演しているジャック・ブラックは、AC/DCの大ファンで、この映画では、アンガス・ヤングのステージ衣装をマネして出演、『悪魔のハイウェイ』、『バック・イン・ブラック』『イッツ・ザ・ロングウェイ・トゥ・トップ』などの曲を演奏シーンやBGMとして映画の中で使っています。これらの曲の使用は、ジャック・ブラックの希望で採用されたそうです。また映画『ロック・ユー』でも、AC/DCのアルバム『バック・イン・ブラック』に収録されている『ユー・しゅっ九・ミー・オールナイト・ロング』が使用されています。