パンクロックは、ここからはじまった・・・
1976年に、スティーヴ・ジョーンズ(G)、ポール・クック(Ds)、ジョニー・ロットン(Vo)、グレン・マトロック(B)の4人のメンバーで結成され、1977年発売のアルバム『勝手にしやがれ!』を発表、このデビューアルバムにして唯一のスタジオレコーディングアルバム『『勝手にしやがれ!』は、世界中で大ヒットしただけではなく、ロックというジャンルだけでなくファッション、ライフスタイルにまで世界中に大きな影響を与えたパンク・ムーブメントのキッカケを作ったアルバムとなり、パンクロックのファンにとっては、伝説的なバンドとして絶対的な存在感を持っています。
パンクのカリスマ、その虚像と実像
パンクロックのファンを中心に伝説的なバンドとして人気のあるセックス・ピストルズですが、やり手のマネージャー、マルコム・マクラーレンの徹底したマーケッティング戦略によってイメージ作りがなされ、そのイメージばかりが先行してしまったバンドでもあります。後に映画化された『グレート・ロックン・ロール・スウィンドル』では、セックス・ピストルズを金儲けの道具に使っていたマルコム・マクラーレンのしたたかな計画が暴露されていて、世界中のロックファンも、マルコム・マクラーレンの戦略にまんまと乗せられていたという事が明らかになりました。しかし、策士のマルコム・マクラーレンでも計算できなかったのは、セックス・ピストルズというバンドの演奏スタイルや、ロックの基本的な姿勢である攻撃的、反社会的な姿勢を蘇らせたメッセージが、世界中に大きな影響を与えてしまった事でしょう。映画『グレート・ロックン・ロール・スウィンドル』で明らかになった演奏面での致命的なレベルの低さ、詐欺のような方法での金儲けなどが明らかになっても、アルバム『『勝手にしやがれ!』のシンプルで攻撃的なスタイルや、体性にツバを吐く様な革命的で強烈なメッセージは、すべてのパンクバンドの手本となり、その価値は下がる事がありませんでした。
ソングライターとしてバンドの重要なメンバーだったグレン・マトロックがクビになった後に加入したシド・ヴィシャスも、セックス・ピストルズとバンドと同じぐらい強烈なキャラクターで、バンドの人気に貢献しましたが、ショービジネスに利用された事によって寿命を縮めてしまったようで気の毒な気がしますが、それもカリスマ的な人間がゆえの運命だったのかもしれません。
攻撃的で破壊的な歌詞を、酔っ払いがクダを巻くような調子で歌うジョニー・ロットンの個性的なヴォーカル、シンプルながらエッジの効いた印象的なギターサウンドを聴かせるスティーヴ・ジョーンズのギター、グレン・マトロックのポップセンスを生かした作曲センスが見事にまとまり、反逆者としてのイメージだけでなく音楽的にも魅力のあるバンドです。『『勝手にしやがれ!』は、本当にセックス・ピストルズのメンバーでレコーディングされたのか?という疑惑もありますが、他のミュージシャンを使ってレコーディングされていたとしても、彼らの音楽的な魅力には変わりはありません。パンクロックってどんな感じ?と初心者に聴かれたら、迷わずセックス・ピストルズ!そんな偉大な存在感のあるバンドです。できれば、恥さらしな再結成などはしてもらいたくなかったんですが、これも彼らならではの嫌がらせなのかもしれません。