ジャズクラブで聴く喜び

　２０００年に、約２０年ぶりに発売されたスティーリー・ダンの『トゥー・アゲインスト・ネイチャー』から３年後の２００３年に発表されたアルバムで、前作『トゥー・アゲインスト・ネイチャー』ほどのセールス、評価は得られなかったものの、スティーリー･ダンのファンを裏切らない内容で、スティーリー･ダンの健在ぶりをアピールした名盤だと思います。

　スティーリー･ダンに限らず、ロックの黄金期のアーティストが色々と再結成するようになって、往年のロックファンには嬉しい限りですが、再結成して活動をしているアーティストのほとんどが、期待を裏切ってくれます。期待する方が悪いのかもしれませんが、体力の衰えは仕方ないにしても、新曲の質が低すぎるのには、本当にガッカリします。イマジネーションが尽きたのか・・・とあきらめるしかありません。こういう事が多いので、正直言って、スティーリー･ダンのアルバムも買う気がしませんでした。『彩(エイジャ)』『ガウチョ』だけ持っていればいいかな、という感じで、しばらくは購入しませんでした。高音質ソフトＤＶＤオーディオで発売されたのをキッカケに購入したのですが、これは例外でした。再結成の失敗パターンで、ハードロック系のバンドだと、年齢的な衰えで声が出ない、ビートに切れがなくなる、などなどの要素がありますし、コーラスグループなどでも、声が出なくなってヒドイ演奏をするアーティストがいますが、スティーリー・ダンは、ヴォーカル、コーラスも昔と同じグレード、しかも『ガウチョ』のアルバムの頃の洗練されたアレンジセンス、作曲能力はそのままでした。『ガウチョ』発表後、すぐ後にこのアルバムが発売されていてもおかしくないほどのクオリティで、ＡＯＲファンにとっては、絶対に満足できる内容だと思います。

　『彩(エイジャ)』『ガウチョ』に通じる雰囲気を持ったアルバムで、秀作ぞろいですが、５曲目の『スラング・オブ・エイジズ』では、なんとウォルター・ベッカーがリード･ヴォーカルととっています。ちょっとシャレの効いた、ゆったりとしたアレンジに低く落ち着いた歌声で歌うウォール・ベッカーのヴォーカルは嬉しい驚きでした。このアルバムでは、ギターだけでなく、ベースもウォルター･ベッカーが担当していて、今までに無いグルーブ感を演出しています。ギタープレイでもリズムをうまく利用したフレーズを組み立てるのが得意なだけあって、ベースでも驚くほどセンスのいいプレイを聴かせてくれています。ウォルター･ベッカーが大活躍しているアルバムという点でも、ファンには嬉しい作品だと思います。

　  　

 

■　エヴリシング・マスト・ゴー 　■

すべて精算するしかないさ

　会社を廃業することになった男が、過去を思い出しながら、もう一度チャンスがあったら・・・と嘆く歌ですが、けだるいサックスの音色が、歌詞の内容をうまく表現しています。小さなジャズクラブで酔っ払いながら、グチをこぼしているような雰囲気があって、ちょっと笑える名曲だと思います。

 

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ＤＶＤオーディオ

　この作品は、ＤＶＤオーディオでも発売されていました。このアルバムは、全体のイメージとしては、どこまでも広がりのあるスケールの大きい音質というよりは、小さなジャズクラブでくつろいで音楽を聴くようなイメージの音作りになっています。ＤＶＤオーディオでも、そういう雰囲気が演出されていて、適度な広がりと奥行きのある音質に工夫されています。特に５．１ｃｈで聴くと、ジャズクラブの最前列で聴いているような心地のいい音場を満喫できるので、高音質で音楽を聴けるだけでなく、音楽を聴くための最高の空間まで手に入れることができます。ボーナストラックとしてドナルド･フェイゲンとウォルター･ベッカーののインタビューが収録されていますが、こちらは、二人がタクシーに乗り、タクシードライバーと会話するという演出で収録されていますが、映像に字幕は付いていません。国内盤のＤＶＤオーディオには、このインタビューの対訳が付いていますが、輸入版には対訳がないので、英語が苦手な方は、国内盤を購入した方がいいと思います。この作品のＤＶＤオーディオは、現在廃盤で再発売の見込みがないので、中古商品のみで入手が可能です。

 

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