これ以上は無い・・・

　１９８０年発売、スティーリー・ダンの７枚目のスタジオレコーディングアルバム。アメリカチャートで最高位９位を記録、シングルカットされた『ヘイ・ナインティーン』も１０位まで上昇するヒットになり、プラチナディスクを獲得。前作『彩(エイジャ)』以上に磨きぬかれたセンスと、ロック史に残る音質の良さで、スティーリー・ダンの最高傑作と言われる名盤です。

　

　ライブで演奏するのを嫌い、レコーディングに全身全霊を傾けるスティーリー・ダンならではでしょうか、恐ろしく音質のいいアルバムになっています。前作『彩(エイジャ)』の音質の良さも音楽関係者にショックを与えていたのに、それ以上の高音質でレコーディングされたこのアルバムは、レコーディングエンジニアや、プロデューサーにとってはレコーディングバイブルのような価値もあり、さらに楽曲の完成度の高さもあって、ＡＯＲ系のアルバムとしては最高傑作として知られています。そして、スティーリー・ダンならではの豪華なゲストミュージシャンが、それぞれのテクニックとセンスを存分に発揮して、類稀な名盤の完成度の高い名曲の数々に見事に彩りを加えてます。ロック系、ジャズ系の豪華なアーティストが、３０人以上参加していますが、ごく一部だけ紹介してみると、マーク・ノップラー（ダイアー・ストレイツ）、ジェフ・ポーカロ（ＴＯＴＯ）、スティーブ・ガッド（スタッフ）、マイケル・マクドナルド（ドゥービー・ブラザーズ）、リック・デリンジャー、ラリー・カールトン、デヴィッド・サンボーン、バーナード・パーディーなどなど、信じられないような顔ぶれです。最高の音楽スタジオを貸切状態でレコーディングし、しかも、アメリカで最高の実力とセンスを持つミュージシャンを全て結集させたようなレコーディングをして完成させた名盤なので、スティーリー・ダンの名盤というだけでなく、アメリカを代表するミュージシャンの共演アルバムとして記念碑的なも価値のあるアルバムかもしれません。

 

　スティーリー・ダンのアルバムの中でも最も音が良く完成度の高いアルバムとして知られていますが、洗練されたサウンドで冷たいサウンドなのか？というと、そんな事はありません。曲の完成度を高める為に最高のミュージシャンが起用されて、洗練されたアレンジで録音されていますが、それぞれのミュージシャンの個性が生かされているので、クセがあり人間味のあるフレーズが随所に聴かれ、ミュージシャンの繊細なタッチによる微妙なニュアンスが細やかにレコーディングされているので、洗練されていながらも、機械的にならず人間臭さのあるアルバムです。しかも、バーナード・パーディーをはじめ、リズムセクションのミュージシャンが、リズムマシンでは絶対に出せないグルーブ感で躍動感を与えているので、浮遊感を味わえるような心地よいビートによって、癒し系の高揚感が感じられます。音の良さ、ミュージシャンのテクニックとセンス、そして人間味のあるフレーズとビートの楽しめる極上の名盤で、じっくりと音楽を楽しみながらも不思議な高揚感に身が包まれるようなアルバムです。

　  　

 

■　ヘイ・ナインティーン 　■

　重厚な曲が多いアルバムですが、この曲は、最もラジオ向けと言うか、ポップでヒットソングとして楽しめる名曲です。歌詞もシャレが効いていて、オジサンになってしまった中年男が、１９歳の女の子に向かって、『俺も昔は結構イケてたんだぜ！』と声をかけるという内容で、中年男性の若き日を懐かしむミジメさ、往生際の悪さが笑えます。

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ＤＶＤオーディオとＳＡＣＤも発売されました

　このアルバムはアナログ盤で発売された当初から、ロック史の中でも最高の音質でしたが、リマスターＣＤ、ＳＡＣＤの他に、ＤＶＤオーディオが発売されていました。アナログ盤、ＣＤでも十分な高音質ですが、スティーリー・ダンの名盤を、最上級の高音質ソフトで楽しみたいという方、オーディオファンの方には、ケタ違いに音質のいいＤＶＤオーディオがオススメです。ＤＶＤオーディオの企画が終了してしまったので、中古商品のみで入手可能ですが、人気が高くて入手困難になっています。中古商品での相場は５０００円から１００００円前後なので、５０００円ぐらいで入手できればお買い得でしょう。

 

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