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イントゥ・ザ・ワイルド
 
Into The Wild

●監督
ショーン・ペン

●キャスト
エミール・ハーシュ
マーシャ・ゲイ・ハーデン
ハル・ホルブルック
キャサリン・キーナー
ウィリアム・ハート
ヴィンス・ヴォーン
クリステン・スチュワート


●パームスプリング国際映画祭:監督賞受賞

■ ストーリー ■


1990年、大学を優秀な成績で卒業したクリスは、将来有望なな若者で、両親も期待していたが、突然、貯金を全て慈善団体に寄付して、放浪の旅に出る。旅の途中で農場で働き、ヒッピー達と暮らし、多くの人間との出会いで人間的に成長していくクリスだったが、親しくしてくれた人々と別れ、アラスカの荒野へと向かって行く・・・。

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■ レビュー ■

 

 裕福な家庭に育ち、大学を優秀な成績で卒業したばかりの若者が、なぜ全てを捨ててアラスカへ向けて旅立ったのか?実話を元にしたジョン・クワカラー著『荒野へ』を、ショーン・ペンが監督。主演は若手ナンバー1の実力派エミール・ハーシュ、その他『アルタード・ステーツ』『再会のとき』などに出演したウィリアム・ハート、『この森で、天使はバスを降りた』『ミスティック・リバー』などに出演しているマーシャ・ゲイ・ハーデンなどの名優が出演。ショーン・ペンの監督作品も、4作目ですが、円熟の域に達しているような見事な風景の挿入、人間の表情を最大限に生かしたカットなど、原作の魅力を最大限に引き出した作品になっていると思います。

 物質主義の社会を拒絶し、自由を求めてアラスカへ・・・、このテーマだけでも魅力的ですが、この作品は、人生のバイブルになるほどの感動を与えてくれる傑作だと思います。もし、主人公のクリスが、家族や友人を無視して、自分勝手に自由を追い求めている若者の物語だったら、納得がいかないというか、全てに関して共感できないだろうなと、ちょっと不安でしたが、この実話の主人公クリスは、旅で出合った人々の交流から予想以上に人間的に成長していて、嬉しい驚きがありました。アメリカを代表するミュージシャン、ブルース・スプリングスティーンが、『自由って言っても、家族や友人とのつながりがなければ、そんなものに意味はない』と語っていましたが、この作品のテーマになっている自由も、ブルース・スプリングスティーンの語っている自由の意味に通じると思います。個人的には、アカデミー賞の作品賞を取ってもおかしくない傑作だと思います。

 この作品には凄く期待していたんですが、観るのが怖いという気持ちもあり、結局、DVDが発売されるまで待ちました。ショーン・ペンの監督第1作目の『インディアン・ランナー』が、あまりにも衝撃的だったので、精神的に、かなりダメージを受ける可能性があり、特に今回の作品のテーマはヤバイな、と感じて警戒してしまいました。観たら絶対に影響を受けてしまうだろう、避けてきた問題に答えを出さなければいけないような予感がありましたが、やっぱり、その通りになってしまいました。そろそろ私も旅に出ないと・・・。

許せるときがきたら・・・

 旅の途中で出合った老人ロンとの会話が、この作品の中で、最も真理を感じさせるシーンだと思います。クリスが自分は幸せだったと実感できたのは、憎んでいた両親を許せた事が大きかったと思います。宗教的にどうのこうのでは無く、真の心の平和は、憎しみを抱いている相手を許す事から得られるのかもしれません。DVDのチャプタータイトルは『英知を知る』になっています。

幸福が現実となるのは・・・

 映画のエンディングで、クリスが書き残した言葉には重みがあります。放浪の旅で人々とふれあい、自然の中での暮らして魂の自由を感じたクリスが、最終的に行き着いた幸福感とは何か?エゴイズムから脱却した究極の価値観に安堵感を感じられます。



名シーン

考えがあるんだが

 旅で出合った老人ロンと、クリスとの別れのシーン。保守的な老人のロンと、文明社会の価値観を否定するクリスは、全く正反対の人間で、理解しあう事は不可能のように思えますが、赤の他人だった二人が、親交を深め、実の親子以上の信頼関係を築き、ロンはクリスに対して、遠慮しながらも、ある提案をします。その言葉に、ロンのクリスに対する愛情が溢れていて、涙無しには観ることができません。

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ガイド

人間より自然を愛す 

 映画の冒頭でバイロン卿の言葉が引用されていますが、人間より自然を愛する人、人間より動物を愛する人も世の中には多くなっているんじゃないでしょうか。かなり悲観的な見方かもしれませんが、自己中心的で、利害関係ばかり気にする人間が増え続けている現代では、仕方のない事かもしれません。この作品の主人公の生き方、死に方も理想的で憧れます。私も共感できるのですが、この映画の主人公のように生きたいと憧れている人は、かなり多いとおもいます。私の友人にも、休日は必ず登山にでかけてしまう奴や、旅行資金が貯まるとすぐに放浪の旅に出てしまう奴、社会から離れ、自給自足の生活を考えている奴などもいます。

 ついでですが、アラスカに魅せられて、アラスカで写真を取り続けている友人のホームページがあります。最近更新していないようですが、興味のある方は見ていただければと思います。

Yasutaka Hitsumoto Photo Gallery


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