アメリカの最後の希望
昼間は肉体労働で汗を流し、仕事が終わるとジュークボックスのあるバーでビールを飲み、ビリヤードをしたり、踊ったりして楽しむ。週末は、彼女とドライブしたり、近所の友達や、職場の仲間と草野球をする・・・そんな平均的なアメリカ人の代弁者であり、リーダーであるブルース・スプリングスティーンは、アメリカ人にとっては、最後の希望かもしれません。ボブ・ディランの後継者と騒がれてデビューしましたが、ボブ・ディランが仙人のようになって、実存感が全くなくなってしまってからは、音楽的にも、メッセージ性の面からもブルース・スプリングスティーンは、アメリカ人のリーダーであり、彼にに変わるアーティストは一人も出てきていません。
少年時代に、エルヴィス・プレスリーに憧れてギターをギターをはじめ、1973年1月に『アズベリーパークからの挨拶
』でレコードデビュー。3枚目のアルバム『明日なき暴走』の大ヒットで、アメリカのトップアーティストに登りつめます。その後も『ザ・リバー』『ボーン・イン・ザ・USA』などの傑作アルバムを発表しますが、プライベートでは、結婚の失敗を経験し、その試練から、彼の最高傑作である名盤『トンネル・オブ・ラブ』が生まれました。1988年、『明日なき暴走』以来バックを勤めてきたEストリートバンドを解散しますが、1999年に待望の再結成。現在もアメリカで最も愛されるミュージシャンとして活躍中です。
ブルース・スプリングスティーン聴くんですか?
今から20年以上前、私がジョン・ランドー著『明日なき暴走』を読んでいると、興奮した表情で、こう尋ねてきた奴がいました。この一言をキッカケに、すでに20年以上の付き合いになる友人Mです。『ボーン・イン・ザ・USA』の世界的な大ヒットにより、マイケル・ジャクソンや、マドンナのようなスター扱いになってしまってからは、歌詞の内容も理解していないファンが増えてしまいましたが、『ザ・リバー』までは、日本では、ブルース・スプリングスティーンの知名度は、今とは比べ物にならないほど低く、一部の熱狂的なファンの間でのみ知られる存在でした。その為、ブルース・スプリングスティーンの曲を理解できる人、共感できる人間同士には、同じ価値観を持つという仲間意識が強く、ソウルメイトと呼べるほどの結びつきがありました。人生の師のような存在であるブルース・スプリングスティーンが、ファンの間でボスと呼ばれるのは、そんな絶大な信頼を得ているからだと思います。特にアメリカ人にとっては、彼の存在が最期の希望と言えるほど大きなものになっているのかもしれません。