1977年日本映画。監督は『学校』『息子』『幸福の黄色いハンカチ』の山田洋次。出演は、渥美清、倍賞千恵子、真野響子など。日本を代表する長寿シリーズ『男はつらいよ』の19作目。
現代社会に生きているにも関わらず、未だに殿様気分の抜けない老人と、礼儀知らずの寅さんの組み合わせが楽しく、真野響子さんが主演した作品としても人気のある作品です。殿様の子孫だという老人を演じる嵐寛寿郎さんは、一歩間違えば、ただのボケ老人のように見えるので、無礼な寅さんとの組み合わせは100%成功とは言えず笑えない場面もありますが、嵐寛寿郎さんの存在感は大きく、世間知らずで浮世離れした老人という意味ではハマリ役でしょう。また、亡くなった主人の墓参りを忘れない未亡人を演じる真野響子さんの清楚な魅力は、シリーズ48作品の中でも特別な魅力があり、真野響子さんが出演しているというだけで、この作品が好きなファンも多いと思います。タイトルの通り、寅さんと殿様気取りの老人のドタバタコメディがメインメインの作品ですが、いつもは無口でほとんど自己主張しない博が、殿様に対して露骨に嫌悪感を示していたり、殿様の息子が鞠子に手切れ金を持って来た事に激怒するとらやの家族の姿が描かれ、権力者や資産家に対する風刺も忘れていません。コメディの要素としては、映画の前半でのトラという名前の野良犬を巡っての騒動は、かなり笑えますし、真野響子さんの美しさを楽しめる作品ですが、義理の父親である殿様と鞠子の関係なども描かれているため、寅さんの恋愛の要素が弱いのが残念です。
久しぶりにこの作品を観て、誰かに似ているなと思っていたんですが、昔ガソリンスタンドで働いていた時のお客さんに似ていることに最近気付きました。美人女優やモデルなどは、テレビや雑誌などで見ることはあっても、実際に目の前で観る機会はほとんど無いので、真野響子さんのような美人を目の前にすると、その衝撃はあまりにも大きく、はじめてそのお客さんを見たときの衝撃は今でも覚えています。しかも、美人なだけでなく性格も良く、ちょっとしたサービスをしただけでも、御礼と言って差し入れをしてくれました。私が今までの人生で出会った女性の中では、一番美しい人なので忘れられない存在です。美人で性格もいい女性ってなかなかいませんよね。あのスタンドを辞めてもう10年、今頃どうしてるかなぁ、『男はつらいよ・柴又慕情』『男はつらいよ・寅次郎恋やつれ』で吉永小百合さんが演じていたマドンナと同じ名前だったなぁ。もし、このページ読んでいたら、メールください!。無理だろなぁ。
旅先じゃ、何でもない親切でも心に沁みるもんだからよ
一年中旅暮らしをしている寅さんは、旅人の気持ちを誰よりも理解しているようです。旅をしている時は、旅先で出会う人はすべて他人ですが、見ず知らずの人にも親切にしてくれる人がいるものです。そんな親切な人に出会った喜びは死ぬまで忘れられない思い出になり、感謝の気持ちから、自分も他人に親切にしたいという気持ちが生まれます。ちょっと道を尋ねられただけの相手にも親切に対応すれば、その人を幸せな気分にしてあげられるかもしれません。
親父に何か言われて、引っ込むようじゃ男じゃな
殿様の反対を押し切って結婚した息子を寅さんが褒めていますが、仕事や結婚など、自分の人生の決断を全て親の言いなりで決めてしまうような自立心の無い男では、いつまで経っても一人前の男になれないかもしれませんね。
世の中には、もっと困っている老人がたくさんいるんですよ
殿様が不幸な老人だと主張する寅さんに、博さんが反論します。博のようなインテリにとっては、独裁者の象徴のような殿様は、庶民の敵で憎むべき存在なんでしょうね。博さんが、珍しく嫌悪感を露にしているのが印象的です。考えてみれば、金持ちの老人のわがままよりも、もっと深刻な悩みを抱える老人はたくさんいるんですから、博さんが怒るのも当然です。