１９１８年ニューオーリンズで一人の赤ん坊が生まれるが、彼は８０歳の老人のように衰弱していた。母親は出産の負担によって死去し、父親は、わが子の奇異な姿に動揺して、その子を捨ててしまう。しかし、クイニーという黒人女性がその子を拾い、ベンジャミンと名付けて育て始めるが、ベンジャミンは、普通の人とは逆に年齢を重なるごとに若返っていった。１９３０年の感謝祭で、ベンジャミンは少女デイジーと出会い、ふたりは心を通わせるようになるのだが・・・。

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　２００８年アメリカ作品。監督は『セブン』『ファイト・クラブ』などのデヴィッド・フィンチャー、出演は『セブン』『セブン･イヤーズ･イン･チベット』のブラッド･ピット、『バベル』『ロード･オブ･ザ･リング』のケイト･ブランシェットなど。８０歳の衰弱した体で生まれ、どんどん若返っていく不思議な運命を背負ったベンジャミンの数奇な人生を描く人間ドラマ。

　ブラッド･ピットとケイト・ブランシェットという名実共にトップの名優を主役に、『セブン』で全世界に衝撃を与えたデヴィッド・フィンチャーーが監督。話題性も十分の作品でしたが、期待通りの傑作になっています。普通の人とは逆に、年齢を重ねるごとに若返って行く男の一生を描くというシンプルなストーリーで、長時間の作品の割には複雑で難解な要素は無く分りやすくなっていますが、主人公のベンジャミンの人生の劇的で、波乱万丈の人生は、エンターテイメント性が抜群で、全く長さを感じさせません。１９１８年からはじまる物語で、当時の時代をリアルに描いていますが、まるで紙芝居を見ているような粋な映像が織り込まれ、絵画的なセンスで芸術性の高いショットも多いので、ドキュメンタリー的な退屈なリアリティではなく、芸術性の高い映像美を楽しめるのもを見所です。ブラッド･ピットとケイト・ブランシェットは、『バベル』でも共演していましたが、『バベル』では、登場人物が多かった為、出演時間が短く二人の魅力を十分に楽しめませんでした。本作では、主演二人の恋愛を中心に描かれているので、ブラッド･ピットとケイト・ブランシェットの演技力、ルックスの魅力を十分に楽しめる作品になっているのも、ファンとしては嬉しいところでしょう。そして、ベンジャミンの人生を通して、人生とは？死とは？運命とは？というテーマをじっくりと楽しめるという啓発的な内容なので、出演者の魅力、エンターテイメント性の高いストーリーと極上の映像美を楽しみながら、人生についてのヒントをもらえるような名作になっています。文句無しの名作ですが、『セブン』『ファイト・クラブ』などの作品で、現代の人間の生き方や社会の現状を暴き衝撃を与えたデヴィッド・フィンチャー監督の作品としては、マイルドな作品で、運命論などについての新しい解釈などは出てきません。その分、希望のある万人向けの作品になっていますが、デヴィッド・フィンチャー監督の作品らしいショッキングなテーマを期待するとアテが外れるかもしれません。

　いい意味で期待ハズレの作品でした。キャストも監督も一流で、派手に宣伝されている作品は、期待ハズレの作品が多いですが、この作品は、デヴィッド・フィンチャーらしからぬ、生きる希望を与えてくれるような作品で、娯楽としての映画の楽しみとメッセージ性を兼ね備えた作品として楽しめました。哲学感、死生観、運命論などについては目新しさはなく、スピリチュアルなテーマの作品としての斬新さはありませんが、使い古されたような人生感についての言葉も、これほどの映像美と物語の中で語られると説得力があります。同じ言葉でも、感動的なほどの芸術的センスと、情感豊かな物語によって、観る者の心に焼き付ける事ができるという、いいお手本だと思います。久しぶりに人生について考えさせられました。

昨日の自分とは違うわ

　毎日単調な日々を送っていると、同じ事の繰り返し、何も変わっていないような気になってしまいますが、毎日少しづつ衰えていますし、今日何か新しい事を学べば、昨日の自分より少し賢くなっています。また、何か善行を行えば、昨日よりいい人間になっているかも知れませんし、悪事をすれば、昨日より罪深い人間になっているかもしれません。毎日少しづつ変化している自分を自覚し、いい意味で変化しようとする意志があれば、人生はどんどん良くなっていくのかもしれませんね。

人は皆、愛する人を失うものよ

　誰にでも必ず死は訪れます。愛した人とも必ず死別しなければならないのは悲しいですが、これだけはどうにもなりません。いつか愛する人を失ってしまうと覚悟しなければならないわけですが、そんな覚悟があれば、生きている間に愛する人と一緒にいる時間に感謝し、生きる喜びを見出せるかもしれません。

遅すぎる事は何も無い、望みはきっと叶う

　もうダメだ、もう遅いと諦めてしまうと、その時点で終わってしまいます。諦めずに努力を続ければ、少なくとも可能性は残りますが、本人が諦めてしまったらどうにもなりません。夢を叶えられるかどうかは、人間の意志に委ねられているのかもしれませんね。

お迎えが来たら、行くしかない

　ベンジャミンが父親と一緒に朝日を見るシーンの美しさは格別です。天命を全うしたという父親の覚悟と美しい風景が溶け合って魂の平安が感じられるような感動を与えてくれます。映画史に残る名場面でしょう。

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霊能者のエドガー・ケイシー

　この作品の中でエドガー・ケイシーという霊能者について語られていますが、エドガー・ケイシーは有名な霊能者で日本でも翻訳された書籍が何冊も出版されています。睡眠状態で天啓を受け、数々の預言を的中させた霊能者として有名です。預言者として有名なだけでなく啓発的で希望を与えてくれるような名言を多く残してくれた人としても有名なので、スピリチュアルな知識に興味のある方なら、一読の価値ありです。

 

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