大手の運送会社フェデックスのマネージャーとして働いているチャックは、恋人ケリーに指輪を贈り、大晦日の日に再開してプロポーズするつもりだったが、出張中に彼の乗った飛行機が海に墜落、無人島に漂着してしまう。チャックは、文明の痕跡すら無い無人島で、一人ぼっちでサバイバルを始めるのだが・・・。

●画像安定装置の使い方

　２０００年アメリカ作品。監督は、『バック･トゥ･ザ･フューチャー』『フォレスト・ガンプ・一期一会』のロバート･ゼメキス、出演は、『アポロ１３ 』『ロード・トゥ・パーディション』のトム･ハンクス、『ペイ・フォワード・可能の王』『ボビー』のヘレン・ハントなど。仕事人間として生きてきた男が、無人島での孤独な生活を経験して人生を見つめ直す姿を描いた人間ドラマ。

　オスカー俳優トム･ハンクスの演技力が最大限に生かされた作品であり、ロバート･ゼメキス監督らしい哲学感が反映された名作です。主人公のチャックが飛行機事故により無人島で孤独な生活を強いられるという物語が、本作のハイライトになっている為、トム･ハンクスが演じる主人公チャックの無人島生活のシーンが作品の半分を占め、ほとんどトム･ハンクスの独壇場というか、トム･ハンクス任せの作品になっています。共演者無しで孤独な生活を演じるというだけでも凄いですが、孤独な生活の寂しさを紛らわす為にボールに名前を付けて人として接するシーンには、妙な説得力があり、主人公の感情に同調させられてしまいます。そして、不条理な試練があっても、それを乗り越えて希望を見出そうとする主人公の前向きな生き方に励まされ、観終わった後に、温かい気持ちさせてくれる深いテーマのある名作です。映像的には、飛行機が墜落して水没し大波に飲まれてしまうシーンに、背筋が寒くなるような緊張感とリアリティがあり、飛行機墜落の恐怖を体感できますし、オープニングとエンディングで舞台となる広大な土地の風景には、絵画的なセンスが感じられ、ため息が出るほどの美しさです。仕事中心の生活になっている現代人に対するアドバイスとなるテーマ、恋愛映画としての感動、エンターテイメントとしてのサバイバル映像なども楽しめる娯楽作品ですが、サバイバルのシーンは、エンターテイメントとして不快感を感じない程度にまとめてあるので、サバイバルの厳しさなどに関しては甘さがあり、リアリティを追求したサバイバル描写にはなっていないので、サバイバル術の参考にはならないと思います。

　突然、無人島で一人きりの生活がはじまってしまったら？というテーマは、色々な意味で興味深く、かなり楽しめました。サバイバルに関しての究極のリアリティというタイプではありませんが、文明社会から切り離された現代人が、いかに無力か？仕事を優先して生きている人間の人生がいかに空しいか？何を希望に生きるのか？というテーマは、現代人にとっては考えさせられる事が多く、自分の人生を見直すきっかけを与えてくれるかもしれません。仕事で多忙な日々をおくって家族や友人との人間関係がおろそかになっている人には、是非観ていただきたい作品です。

我々は時間に縛られて生きている

　ムダを省き合理化が進む現代社会では、時間との戦いというテーマで仕事をしている人が少なくありません。時間厳守という仕事も多いので仕方がありませんが、家族や友人など愛するを犠牲にするほど時間に縛られる仕事はどうなんでしょうか？。

これから何を？

　恋人ケリーとの再会だけを希望に生きてきたチャックですが、帰国してみると状況が一変して希望を失ってしまいます。これから何をすればいいのか？何に希望を持てばいいのか？という疑問に対する答えが、この作品のエンディングシーンで描かれています。この作品のオープニングで出てくる家が、エンディングでも登場しますが、ここに注目してください。