学業もスポーツも万能なベンは、優秀な成績大学を卒業したが、空しさを感じ、将来に不安を抱いていた。ベンの両親は、成績優秀な自慢の息子の為に、盛大な卒業祝いのパーティーを開催し、そのパーティーで、ベンは、ロビンソン夫人と出会う。その後、裕福な暮らしに退屈していたロビンソン夫人は、ベンを誘惑し、ホテルで密会を重ねるようになる。しかし、ロビンソン夫人の娘エレーンが帰省し、両親のすすめで、エレーンと交際するようになったベンは、エレーンの純真さに惹かれて本気で彼女を愛するようになり、嫉妬したロビンソン夫人は、自分との関係をバラすとベンを脅迫する・・・。

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　１９６７年アメリカ作品。監督は『イルカの日』『心の旅』などのマイク･ニコルズ、出演は『真夜中のカウボーイ』『ウワサの真相・ワグ･ザ･ドッグ』のダスティン･ホフマン、『明日に向って撃て！』『さすらいの航海』のキャサリン･ロス、『大いなる遺産』『僕たちのアナ･バナナ』のアン･バンクロフトなど。世の中の汚い欲望に翻弄され、恋人との仲を裂かれた男が、恋人を取り戻そうとする姿を描いた恋愛作品。

　結婚式場から花嫁を略奪するという古典的な恋愛映画ですが、保守的な体制に対して反抗する社会派作品としても評価の高いアメリカン･ニューシネマの傑作です。金持ちのボンボンが、将来に不安を抱えて腐っていたり、欲求不満の金持ちオバサンが、狡猾な手段で誘惑したりと、映画の前半はイライラするシーンも多く、じっと我慢して成り行きを見守る展開ですが、キャサリン･ロスが演じるエレーンの登場で、毒々しい雰囲気に希望の光が現れ、感動のクライマックスシーンへとストーリーが続きます。自分の富と名声にしか関心の無い体制側の人間の汚さとエレーンの純真さのコントラストが絶妙で、ベンがエレーンをいじめるシーンでは、本気で怒りをおぼえてしまうほど感情移入できますし、エレーンの感情が爆発するクライマックスシーンは、何度観ても感極まります。クライマックスシーンでの爆発的な感動の為に、映画の前半はダラダラとした展開で、ベンの優柔不断な態度にもイライラさせられますが、そこをガマンして最後まで観れば、最近の映画には無い格別の感動が味わえる名作です。

笑顔なき旅立ち

　感動的なクライマックスシーンの後、バスに乗り込んだベンとエレーンの表情が、だんだん冷めていきます。この作品に関する映画評で何度も語られているように、世の中全てを敵にしてしまった為に、苦難の多い未来を暗示させた二人の表情が印象的です。決してハッピーエンドでは終わらないアメリカン･ニューシネマらしいエンディングで、楽しい気分にはなれないものの現実味のある幕切れだと思います。

サイモン＆ガーファンクルの名曲

　この作品には、サイモン＆ガーファンクルの名曲『サウンド･オブ･サイレンス』『ミセス･ロビンソン』などの名曲が使用され、サウンドトラックアルバムも発売されています。最近のサウンドトラックは、映画とのタイアップでヒットを狙うような商魂たくましいものも多いですが、この作品では、サイモン＆ガーファンクルの曲の魅力を、うまく映像にフィットさせた自然な仕上がりで、『イージー･ライダー』『いちご白書』のサウンドトラック・アルバムと並んで、名盤として知られています。

 

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