ロサンゼルスにあるミリオンダラー・ホテルには、世の中に順応できない風変わりな住人たちが暮らしていた。ある日、メディア王の御曹司だったイジーが、そのホテルの屋上から転落死した為、メディア王の依頼でＦＢＩ捜査官スキナーが捜査の為ホテルにやってきた。ちょっとオツムの弱いトムトムは、そのホテルの住人たちの雑用をしながら暮らしているが、スキナーの助手として捜査に協力する事になる。しかし、本にしか興味の無い読書家のエロイーズ、自分がビートルズのメンバーだったと信じている男など、風変わりな住人ばかりで、まともな証言が得られず捜査は難航する・・・。

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　２０００年ドイツ･アメリカ合作。監督は、『ベルリン・天使の詩』『パリ、テキサス』などのヴィム・ベンダース。出演は『リーサル・ウェポン』『パトリオット』などの メル・ギブソン、『フィフス・エレメント』のミラ・ジョボビッチ、『ネル』『プライベート・ライアン』のジェレミー・デイヴィス。人気ロック・バンド、Ｕ２のヴォーカリストが長年温めていたコンセプトを映画化、ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞を受賞した感動作。

　映画のオープニングで使用されているＵ２の曲が、この作品のテーマを物語っています。地位や名声、富で人間の価値を計るような人には全く理解できない映画なので、極端に好みが分かれる作品です。Ｕ２の曲で歌われているような歌詞の内容に共感できる方、あるいは、ショーン・ペンが監督した『イントゥ・ザ･ワイルド』の主人公に共感できる人にはオススメです。ミラ・ジョボビッチが演じる読書オタクの名前がエロイーズですが、この名前は『ライ麦畑でつかまえて』で有名なＪ・Ｄ・サリンジャーの小説に出てくる名前と同じなので、Ｊ・Ｄ・サリンジャーの著書の影響もあるのかもしれません。ハマる人は、かなりどっぷりとハマると思います。社会から見捨てられたような人々が集まる場所、ミリオンダラーホテルの屋上から飛び降りたイジーの死の真相を探る形でストーリーは展開していきますが、ストーリーが進むにつれて、この作品のメインテーマがイジーの思想、生き方である事がハッキリと感じられます。メディア王として君臨し、物欲主義の権化のような父親を嫌うイジーの生き方は、オープニングで使用されているＵ２の曲の内容そのままです。そして、主人公トムトムのエロイーズに対する愛情には、純粋な愛情に比べれば、富や名声なんて大した事では無いと教えられるような気がします。

　かなりマイナーな作品なので、見逃している方も多いと思いますが、ヴィム・ベンダース監督の個性的な映像美は、ハリウッド映画とは全く違う魅力があり、ロサンゼルスを舞台にしているにも関わらずヨーロッパ映画のような雰囲気を楽しめます。捜査官を演じているメル・ギブソンも、ＦＢＩの捜査官という体制側の人間でありながら、ミリオンダラー・ホテルの住人たちと共通の匂いを持つ変人を見事に熱演しています。ただし、ミラ・ジョボビッチは、この作品では、読書オタクの変人というキャラクターなので、セクシーなシーンはなく、かなり小汚い服を着ているので、ミラ・ジョボビッチの色気は期待しない方がいいでしょう。

よく見えないんだ、生きている間はね

　主人公のトムトムが人生の素晴らしさを語る場面では、何か貴重な真理を発見したような驚きがあり、忘れられない言葉が続きます。自殺を選ぶかどうかは別として、ほとんどの人は、死の直前まで人生の本当の美しさや、素晴らしさが理解できないのかもしれません。

彼らはずっと敗者だった

　この作品の登場人物のほとんどは、富や名声とは無縁で、敗残者のような人たちですが、勝者がいれば必ず敗者もいます。勝利によって富や名声を手に入れた人の誇らしげな表情も美しいかもしれませんが、敗者の悲哀にも人間的な美しさが感じられます。

 

普通の人生をおくる夢にかられた

　知的障害があるトムトムは、人並みの生活をすることをあきらめていますが、エロｲｰズと親しくなった事で、エロｲｰズとの平凡な生活を夢見るようになります。エロイーズに朝食を運トムトムの幸福感に満ちた表情が印象的な名シーンです。

 

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サウンドトラックも名盤

　Ｕ２のヴォーカリスト、ボノがこの作品の原案を担当していて、音楽もＵ２の曲がテーマ曲として使用されています。サウンドトラックには、Ｕ２の曲の他に、ミラ・ジョボビッチが歌う曲や、セックス・ピストルズのカヴァーなども収録され、ロックファンにとっては嬉しいアルバムになっています。

 

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