若き医師スタージェスが勤務する病院では、ベトナム戦争の後遺症などで苦しむ患者のために保証された医療制度が、国の予算削減の方針で、患者を強制的に退院させるようになってしまった。利益の追求しか頭に無い院長は、貧乏な患者を治療しないように医師たちに通達するが、スタージェスらは、その命令を無視し、病気で苦しむ患者たちを守っていた。しかし、院長の陰謀によってスタージェスが停職になってしまい、スタージェスの同僚の医師たちは、病院を占拠して院長の横暴な態度に立ち向っていく・・・。

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　１９９２年アメリカ作品。監督は『リプレイスメント』のハワード・ドゥイッチ、出演は『フラッシュバック』のキーファー･サザーランド、『グッド･フェローズ』のレイ･リオッタ、『栄光の彼方へ』のリー･トンプソン、『プラトーン』のキース･デビッド、『フェノミナン』のフォレスト･ウィテカー、『ゴッドファーザーPART�V』のイーライ・ウォラックなど。利益優先で貧しい患者を排除しようとする病院の院長と、患者を守ろうとする若き医師たちの対立を描いた人間ドラマ。

　ＤＶＤでは発売されていますが、日本未公開作品です。病気や怪我で苦しむ人の為に生きようとする医師を描いた作品では、『パッチ･アダムズ』が有名ですが、この作品の医師たちは、ちょっとチンピラっぽい攻撃的な態度で、利益至上主義の病院経営者に反逆するので、現実味のある物語ではありませんが、戦争の後遺症で苦しむ退役軍人の実情、国家予算の削減で、真っ先に被害にあってしまう貧しい人間の苦しみなど、アメリカ社会の抱える問題の一つを浮き彫りにした社会派作品です。また、出演している俳優も有名な実力俳優が勢ぞろいし、人間味のあるドラマを感動的に演じているので、社会派作品としても、人間ドラマとしても上質な仕上がりになっています。日本でも医療費の削減などの問題は、身近に感じられるテーマであり、富裕層、企業への優遇税制など、金持ちに対して有利な法律、予算編成などに対して、貧困層や病気に苦しむ人間に対する配慮の無い政策に関しては、私たちも他人事とは思えません。また、人の命を救うという尊い使命を担っている病院が、利益を最優先して貧困層の患者をゴミのように扱っている現状は、映画『シッコ』でも事実として描かれていて、現実的な問題として考えなければならないテーマだと思います。国家の財政削減の犠牲者の窮状、病院の利益優先の企業体質などシリアスなテーマを描いた作品ですが、豪華な出演者の個性が楽しめ、適度なユーモアも交えているので、暗くなりすぎない感動作に仕上がっています。特に、患者を守ろうと立ち上がる医師たちの毅然とした態度、患者を一人の人間として見つめ、誠意を持って対応する姿には感動させられます。シリアスなテーマなので、派手な娯楽作品が好きな方には向かないかもしれませんが、社会派作品、人間の善意を描いた感動作が好きな方にはオススメです。

　最近、祖父母が介護施設に入り、私も面会の為に介護施設に行く機会が増えたので、この作品の素晴らしさが、一層強く実感できるようになりました。寝たきりの老人の姿を見るのは辛いんですが、介護スタッフの献身的に働く姿や、まるで天使のような笑顔を見る事ができるのは、私にとっては貴重な経験となり、人の為に生きる事に喜びを感じている人間の美しさに心が癒されました。介護の仕事が大変なのは言うまでもありませんが、人の世話をすることに喜びを感じている人にとっては、それほど苦にならないらしく、みんな、おだやかで優しい表情をしています。わがままに生きている自分と比べてしまうと、ひたすら反省しきりですが、この映画に出てくるような善良な人間を実際に見る事ができるというのは、大きな喜びです。老人や貧困層にとっては、ますます厳しい世の中になっていますが、こういう天使のような人たちがいる限り、まだ世の中、捨てたもんじゃないですね。

患者を人間として見てる？

　日本でも介護施設での老人に対する虐待などが問題になっていますが、不規則で長時間の肉体労働に従事している医師や看護婦さんの労働は本当に大変だと思います。死に直面する事も多く、全ての患者に感情移入していたら、精神が持たないかもしれませんし、機械的に仕事をこなしていった方が精神的に楽でしょう。しかし、そんな状況でも、患者さん一人一人に、人間として接している医師、看護婦、介護スタッフも大勢います。この作品で描かれているような善良な人間が、まだ大勢いるという事だけでも感動的です。

時給４ドル２５で？冗談じゃねぇ

　病院を占拠した患者と医師たちに対して強硬手段を使おうとする院長が、警備員に突入するように命令しますが、警備員たちは呆れてしまいます。時給４ドル２５という事は、日本円で時給５００円ほどですから、確かに命を掛けるほどの給料ではありませんね。安い給料で使っているくせに、厚かましく命令する院長にも苦笑してしまいます。

ハワード・ドゥイッチ監督の奥様は？

　この作品の監督ハワード・ドゥイッチ監督は、この作品にも出演している女優のリー･トンプソンと結婚しました。リー･トンプソンと言えば、１９８０年代に『バック･トゥ･ザ･フューチャー』シリーズなどに出演していた人気女優で、ハワード･ドゥイッチ監督の『恋しくて』にも出演していました。

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