１９７０年代初頭のベトナム戦争のさなか、従軍ジャーナリストのジョンは、兵士としてベトナム戦争に従軍していた旧友のレイに協力してもらい、アメリカに居る妻のマージに麻薬を届けようとする。ベトナム戦争での悲惨な体験の代償として麻薬と一儲けしようという考えからだった。 しかし、手違いの為に、レイとマージは麻薬を持って逃げるハメになり、帰国したジョンも麻薬組織に捕まってしまう・・・。

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　１９７８年アメリカ作品。監督はカレル･ライス、主演は『４８時間』『シン･レッド･ライン』などのニック･ノルティ。ベトナム戦争を利用した麻薬の密輸に巻き込まれた兵士の姿を描く人間ドラマ。

　あまり有名な作品ではありませんが、アメリカン･ニューシネマの秀作としてカルト的な人気のある作品です。ベトナム戦争に従軍した兵士と麻薬組織とのトラブルを描いた作品なので、自分の価値観、信念を押し通して世の中全体と戦うというスケールの大きさはありませんが、体制に利用されて従軍し、帰郷してからも麻薬組織に狙われてしまうという孤軍奮闘を描いているので、６０年代の夢の残骸と現実の厳しさがリアルに伝わります。娯楽超大作といった作品では無いので、全体的に地味な作品ですが、ニック･ノルティをはじめとした俳優たちの好演によって、戦争という道徳の通用しない狂気の中で壊れてしまった人間の感情、時代に翻弄され犬死にしていく孤独な男の悲哀が生々しく描かれた名作になっています。アメリカン･ニューシネマの傑作『いちご白書』『卒業』などと比べてしまうと、インパクトが弱いですが、逃げずに勝ち目の無い大きな敵に向って戦いを挑んでいく主人公の姿は、６０年代のスピリットを十分に感じさせてくれます。他のアメリカン･ニューシネマの名作と同様にハッピーエンドでは終わらないので、明るい映画で気分転換をしたい方には向いていません。リアリティを追及したい方、アメリカン･ニューシネマのスピリットが好きな方にのみ、オススメです。

人間は弱いものよ

　象を敵と見なして射殺する、イルカを兵器として利用する・・・。道徳観が全く通用しない戦争の中で正気を保つのは、かなり難しいと思います。麻薬を常用するのは最悪だと思いますが、酒でも飲まなきゃやってられない、麻薬でも使わなければ正気を保てないという残酷な世の中の現状と、人間の弱さが悲しくてしかたありません。

迫害を避けて、ここを隠れ家にしていた

　麻薬のトラブルで逃亡中のレイは、６０年代に住んでいたヒッピー･コミューンに身を隠します。自分たちの理想郷を作ろうとして失敗した夢の残骸に逃げ込むというのが、何よりも悲しいですね。

ドク･ソルジャー・白い戦場とは別の作品です

　キーファー･サザーランド主演の『ドク･ソルジャー・白い戦場』とタイトルが似ていますが、全く別の作品です。また２００２年に同名作品が公開になりましたが、タイトルが同じだけで全く別の作品です。本作は、残念ながらＤＶＤは未発売、中古ビデオテープでのみ入手可能ですが、一般的には、あまり人気の無い作品なので、安く購入が可能です。

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