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ダウン・イン・ザ・バレー
 
Down in the Valley

●監督
デヴィッド・ジェイコブソン

●キャスト
エドワード・ノートン
エヴァン・レイチェル・ウッド
デイヴィッド・モース

■ ストーリー ■

 
 17歳の少女トーブは、母親を亡くし、厳しい父ウェイドと13歳の弟ロニーとの3人でカリフォルニア州サンフェルナンド・バレーで暮らしていた。トーブは、厳格な父親に縛られて弟の面倒を見なければならない日常にうんざりしていたが、ある日、カウボーイファッションのガソリンスタンドの店員ハーレンに出会い、すぐに恋に落ちる。ハーレンは、トーブの弟ロニーの面倒も見るが、父ウェイドは、無職の彼に不信感を抱き、好意を持てなかった。妄想癖のあるハーレンが、トーブとデート中に事件を起こしてしまい、ウェイドは、ハーレンに対する不信感が嫌悪感へと変わり、トーブに交際を止めるように命令した事から、ハーレンはトーブに駆け落ちを迫るのだが・・・。

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■ レビュー ■

 

 2005年アメリカ作品。監督はデヴィッド・ジェイコブソン、出演は『ファイト・クラブ』『アメリカン・ヒストリーX』などのエドワード・ノートン、『シモーヌ』『アクロス・ザ・ユニバース』のエヴァン・レイチェル・ウッド、『インディアン・ランナー』のデヴィッド・モースなど。西部開拓時代のカウボーイに憧れる男の恋愛と孤独な人生を描いた人間ドラマ。

 主演のエドワード・ノートンが脚本にほれ込み製作にも参加した意欲作で、カリフォルニア州サンフェルナンド・バレーの美しい風景、ティーンのエヴァン・レイチェル・ウッドの魅力を楽しめる作品で、時代に合わない男の悲劇が印象的です。演技派として評価の高いエドワード・ノートンですが、この作品では、憧れである西部開拓時代のアメリカのカウボーイとしての自分と、現代に生きる自分の境界が曖昧な主人公を不思議な存在感で演じ、エヴァン・レイチェル・ウッドは、透き通るような白い肌、十代のフレッシュな美しさで天使のような存在感があり、デイヴィッド・モースが演じる保守的で厳格な父親は、異質な存在を赦さない現代社会を象徴するかのような威厳が感じられます。基本的にはラブ・ストーリーですが、西部開拓時代のカウボーイの行き方に憧れる主人公が、現代社会に適応できない悲劇を描いたという意味では異色作です。自分の憧れている西部開拓時代のアメリカという環境と、現代社会とのギャップの中で自分の居場所を見つけられない主人公が、孤立してしまうというテーマは、ある意味では、アメリカン・ニューシネマの主人公たちとの共通点が感じられ、マイノリティ(少数派)の価値観が通用しない現代社会の残酷さを痛感させてくれますし、主人公ハーレンの一途な恋愛にも共感できる人が多いと思います。ちょっと残念なのは、サイコサスペンスの犯人のように悪質な妄想ではないにしろ、主人公ハーレンの妄想壁による問題点が多く、現代社会で孤立する主人公としてはクセが強すぎてイマイチ感情移入できない部分です。ハーレンの妄想による架空の友人などの存在も曖昧で、スッキリしない部分もあります。エドワード・ノートン、エヴァン・レイチェル・ウッドのファン、恋愛映画の好きな方にとっては合格点の作品だと思いますが、主演の二人にも恋愛映画にも興味の無い方にとっては平凡な作品かもしれません。

 もし、自分の住んでいる地域に愛着が感じられず、自分の居場所が見つからないと感じたら新天地を求めて引越しすればいいわけですが、この作品の主人公のように、別の時代に生きたいと感じてしまったら厄介です。私はロックファンなので、10代の頃に、もっと早く生まれて60年代、70年代のロックをリアルタイムで楽しめたら最高だったのに、と考えていた事があります、正直な所、今でもその気持ちに変わりはありません。でも、こればかりはどうにもなりません。自分の生きたい時代を選べないという事を苦痛に感じている人は、この作品の主人公や私だけでなく、以外に多いのかもしれません。

車より人間を好きにならないとダメだ

 車に依存しすぎる現代社会への批判のようにも聞こえますが、人間性が失われ、お互いへの不信感から人間嫌いになり、車などの物質的な趣味への愛情で満足するようになった現代人への皮肉にも感じられます。物より人間を好きになった方が幸せだとは思います。

すべての出来事には意味があるのかな?存在にも

 ブランコに乗るトーブにハーレンが話しかけます。何気ない会話の中のセリフですが、人間の存在、自然界のすべてには、存在の意味があるのかもしれないという考えには、何か根源的な真理が感じられます。




人生がはじまるのを待ってるの

 ハーレンとトーブのラブシーン。エヴァン・レイチェル・ウッドの美しさも印象的ですが、誰かとの出会いによって自分の人生がはじまるのを待っていたというトーブの表情、なりたい自分になるためのハーレンのアドバイスも印象に残ります。

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徹底した個人主義


 DVDに収録されているエドワード・ノートンのインタビューによると、西部開拓時代の徹底した個人主義のライフスタイルを現代で実行してしまうとどうなるのか?というテーマをメイン製作したそうです。西部開拓時代のアメリカは、自分で開拓し収穫したものを財産として所有し、その財産を略奪しようとする人間に対しては銃で武装して自衛するというシンプルな個人主義の社会で、良くも悪くも徹底した個人主義の世の中です。こういうライフスタイルを現代社会で通そうとすると孤立してしまうのは当然のような気もしますが、時代に順応できない孤独な青年の悲しい姿には、エドワード・ノートンも共感したようです。

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