代償の得られない名盤

　 キング・クリムゾンのオリジナルメンバーであり、『クリムゾン・キングの宮殿』の音楽的コンセプトで主要な役割を果たしていたイアン・マクドナルドとマイケル・ジャイルズは、キング・クリムゾンのセカンドアルバムの製作前にバンドを脱退。マクドナルド・アンド・ジャイルズを結成し、１９７１年に、デビューアルバムにして、唯一のアルバムを発表しました。残念ながら『クリムゾン・キングの宮殿』のようにヒットチャートの１位を記録するような大ヒットにはならず、その後、イアン･マクドナルドとマイケル･ジャイルズは、商業的な成功を得られませんでしたが、プログレファンには、名盤として未だに人気が高く、隠れた名盤としてロングセラーを続けています。

　『アイビスの飛行』『イズ・シー・ウェイティング』の２曲は、彼らの個性を出しながらも、メロディアスでシングルヒットを狙えるような秀作。プログレファンの音楽的な渇望を十分に満たしてくれる『組曲ハ長調』『明日への脈動』、そして何といっても一番の聴き所は、組曲『バードマン』。長い曲ですが、最初から最後まで展開力と、人間の潜在意識に流れているであろう美しいメロディは、ピンク･フロイドの名盤『狂気』にも通じる不思議な安堵感を与えてくれます。この曲を聴くと脳がα波になるんでしょうね。それにしても、イアン･マクドナルドのマルチプレイヤーとしての才能、芸術的なセンスには驚かされるというか呆れてしまうほどですし、マイケル･ジャイルズの唯一無二の個性的なドラミングにも一度聞いたら忘れられない衝撃があります。もう２，３枚は、このプロジェクトでアルバムを製作して欲しかったですね。個人的には、ピンク･フロイドの『狂気』と同じレベルの名盤じゃないかと思っています。どっちか１枚だけ選べといわれたら、んー真剣に悩みますね。

コレ何？

　昔、私の住んでいたアパートは、友人達のたまり場になっていたので、人の出入りが多かったんですが、はじめて来た友人には、必ずこのアルバムを聴かせていました。『いいアルバムがあるから聴け！』と薦めるのではなく、何気なくＢＧＭで聴かせるのですが、最後まで聴き終わる前に、みんな必ず『コレ何？誰？何ていうアルバム？』、私の友人はロックファンが多いですが、ロックファンでなくても１００％の確立で、驚き、買いたくなるようです。それが面白くて聴かせているわけですが、ロックファンでも知らない人が多いアルバムなので、丁寧に教えてやるのが、また楽しかったのを覚えています。ロックファンにとっては、楽器の演奏力や、表現力、特にマイケル･ジャイルズのケタ外れの独創的なドラムは、ドラマーには、かなりショックです。クラッシックを中心に聴いている人でも、『イズ・シー・ウェイティング』『バードマン』のメロディは、安らぎを与えてくれるようです。

■　バードマン　■

　

プログレッシブ･ロックらしい大作で、ＬＰ（アナログ盤）で発売されていたときは、Ｂ面に１曲だけという長い曲ですが、展開力があり、最初から最後まで飽きずに聴きとおせます。懐かしささえ感じさせるメロディの数々は、私たちを、ゆっくりと深層心理の世界へ導いてくれます。

 

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　　日本でもプログレファンの間では、評価が高く、国内盤も発売されています。現在リマスター盤は、ＨＤＣＤで発売されているので、かなりの高音質で名盤を楽しむ事ができます。また、ＣＤでは『バードマン』を各５部から選曲できるようになっています。音質的には、ＨＤＣＤで発売されているＣＤが一番いいと思いますが、アルバムの中ジャケットのアートワークも見事なので、アナログ盤を入手してアートワークを楽しむのもいいと思います。

 

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