芸術家としての目覚め

　アコースティック・ギターをメインにしたアレンジでスタートしたスザンヌ･ヴェガですが、このアルバムから、奔放なアイディアを取り入れた曲作りをするようになります。前作『孤独』までは、アコースティック・ギターをメインに、ニューヨークらしい洗練されたアレンジで、バックバンドの演奏も柔らかい印象がありましたが、このアルバムでは、遊び心があるアレンジの曲があり、創作する事の喜びに満ちているような、楽しそうな印象さえ受けます。歌詞の内容も特定の人物を観察して描いているというより、ボブ・ディランのように、雲の上から、人間全体の行動を見渡しているような、抽象的で、皮肉に満ちたものが多く、個人的な感情移入のない分、楽に、楽しく歌い、演奏を楽しんでいるのかもしれません。

　前作『孤独』までは、バックバンドの演奏がセンスのいいＡＯＲのような上品さがあり、しっとりした安心感がありましたが、このアルバムでは、歌詞の内容をくっきりと浮かび上がらせるような、ドライなアレンジ多く、前作までのアルバムより、芸術性の高いアレンジになっていて、嬉しい驚きがありました。前作『孤独』のような大ヒットには、なりませんでしたが、詩人、ミュージシャン、芸術家としてのスザンヌ・ヴェガの進化がハッキリと実感できる仕上がりになっていると思います。歌詞のテーマも笑い飛ばせるような皮肉の込められた曲が多いので、個人的には、落ち込まずに軽く聴けるので、聴き易いアルバムです。

　  　

 タワーレコードでスザンヌ･ヴェガを探す

スザンヌ･ヴェガ『ブック・オブ・ドリームス』You Tubeの動画アドレス

　http://jp.youtube.com/watch?v=1yHdXwJ-NpI

■　ブック・オブ・ドリームス　■

このアルバムからシングルカットされた曲で、このアルバムに収録されている曲の中では、最も有名な曲です。ＰＶは、立体的で奥行きがあり、次元を超越したような、不思議な空間を感じさせる作りでしたが、曲自体も、アコースティック・ギターのアレンジにこだわらない、空間的な広がりのあるポップな仕上がりになっています。

アナログレコードは、まだ買えます。楽天で探しましょう！

 

　このアルバムでは、詩人、ミュージシャンとしての際のだけではなく、アーティストとしての才能も開花したようで、アルバムジャケットや、アルバム中ジャケットのデザインも、ピカソやダリのような画家を想わせる見事なアートワークで、音楽だけではなくアートワークも楽しめる無いようになっています。スザンヌ・ヴェガの作品の中では、あまり人気の無い作品なので、中古商品などは、かなり安く、アマゾンなどで５００円で出品されている事もあります。