ミュージシャンとしての風格、凄みが・・・

　んー、ビックリしました。オープニングからドラム缶を叩いたような金属音、呑み込まれそうな、怪しげなキーボードの音色、図太く大きなベース音。今までのスザンヌ・ヴェガからは、まったく考えられないような斬新で、インダストリアル的なサウンドで、本当に驚かされました。アコースティックギターを主体にしたアレンジにまったくこだわらず、ありとあらゆるタイプの楽器の音色を、曲に合わせて色彩豊かに彩っていくようなアレンジで、スザンヌ・ヴェガらしいポップセンス溢れるメロディとうまく溶け合っています。ただし、アコースティックアーティストとしてのスザンヌ・ヴェガのファンにとっては、たまらなく嫌なアルバムかもしれません。アルバムの中ジャケットには、サーカスのテントの前に座るスザンヌ･ヴェガの写真がありますが、女性としての色気が強く感じられれ、この写真のイメージどおり、まるで怪しげなサーカス団のテントに迷い込んでしまったような、不思議なサウンドに幻惑されてしまいます。

　このアルバムのプロデューサー、ミッチェル･フレームは、スザンヌ・ヴェガと結婚、後に離婚してしまいますが、このアルバムでのスザンヌ・ヴェガの大変身は、ミッチェル･フレームのプロデュースによる影響が大きく、公私ともにパートナーだったスザンヌ・ヴェガも、新しい境地の開拓を、かなり楽しんでいるようにも感じられます。大胆なアレンジだけではなく、様々なイギリス的な音楽性が感じられるアルバムで、ニューヨーク的なサウンド、アコースティック的なサウンドからは、程遠く、アーティストとしての風格、凄みが感じられる傑作アルバムだと思います。　

　  　

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■　ホエン・ヒーローズ・ゴー・ダウン　■

　初期のビートルズや、パンクロックのようなストレートなメロディが楽しめる名曲で、曲の間奏部分では、スザンヌ･ヴェガらしい不思議なメロディも出てきますが、このアルバムの中で最もポップで、一緒に歌いたくなる曲だと思います。

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　前作『夢紡ぎ』まで、バンドのバックメンバー、プロデューサーだったアントン・サンコとは、プライベートでもパートナーだったようですが、このアルバムの製作前に別れてしまったようで、このアルバムには一切参加していません。このアルバムのプロデューサーのミッチェル･フレームとは、このアルバム以降、プライベートでも、交際、後に結婚していますが、交際する男性によって音楽性が変わっていくようです。