久しぶりに寅さんが柴又へ帰ってくると、とらやにリリーからの手紙が届いていた。その手紙で、旅先で病に倒れたリリーが沖縄の病院に入院中だと知った寅さんは、リリーを見舞う為に沖縄に向かい、リリーと久しぶりの再会を果たす。病気が回復したリリーは、しばらくは、寅さんと夫婦のような楽しい生活を送るが、女心の分らない寅さんと口論になってしまい・・・。

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　１９６９年日本映画。監督は『学校』『息子』『幸福の黄色いハンカチ』の山田洋次。出演は、渥美清、倍賞千恵子、浅丘ルリ子など。日本を代表する長寿シリーズ『男はつらいよ』の２５作目。

　『男はつらいよ・忘れな草』『男はつらいよ・寅次郎相合い傘』に続き、旅暮らしの歌手リリーがマドンナとして登場する３回目の作品ですが、前２作同様に、寅さんとリリーさんの切ない恋愛を楽しめる傑作で、シリーズ後半の作品の中で、最も人気のある作品です。『男はつらいよ・忘れな草』では、堅気になろうとした寅さんが北海道の酪農農家で働きはじめるというエピソード、『男はつらいよ・寅次郎相合い傘』では、サラリーマン生活に疲れた家出男が寅さんの旅に同行するなどのエピソードがサイドストーリーとして描かれていますが、この作品では、寅さんとリリーさんの恋愛のみが描かれていて、余分なエピソードを一切省いた純粋なラブストーリーになっています。シリーズに３度目の登場なので、そろそろマンネリ気味かな？という不安を持っている人もいるかもしれませんが、リリーさんがマドンナとして登場した前２作と同じか、それ以上の傑作になっています。寅さんがマドンナ本人に向ってプロポーズする唯一の作品であり、全シリーズの中で寅さんが最も結婚に近づいた作品としても特別な作品でしょう。しかし、余分なものを排除して丁寧に描かれた寅さんの恋愛に感情移入してしまうと、号泣してしまうほどつらい気持ちになる作品でもあります。幸い、エンディングでは粋な演出がされているので、観終わった後に、絶望的な悲恋という感じで暗い気持ちにはなりませんが、ハンカチかタオルを用意してから鑑賞した方がいいでしょう。『男はつらいよ』シリーズの頂点の一つと言える名作です。

　もし、この作品のリリーさんと寅さんのような関係で、こんな結末になったら忘れられませんよね。人間嫌な事悲しい事を忘れるという生きるための本能みたいなものが備わっているので、徐々に記憶は薄れて行くと思いますが、完全に忘れる事は出来ないと思います。これほど縁が深いと、また来世でとかまで考えてしまうかもしれません。一生涯で一人の人しか愛さなかったならシンプルで分かりやすいですが、生まれてから死ぬまでに愛した何人かの中で一番愛した人と結婚できなかったとしたら、最愛の人への想いが死ぬまで消えないかもしれません。最愛の人と結ばれて生涯をすごせる人って、そんなに多くはないんでしょうね。そんな事を考えると、人生は悲しいですね。また来世と言っても、私のような悪人はゴキブリに生まれ変わって、最愛の人は天国で暮らしていたりすると、めぐり合えないでしょうしね・・・。

何で俺ばっかり見つかるのかな

　タコ社長が脱税を見つかってしまい、どうして自分だけ見つかるのか？。と嘆いていますが、考えようによっては、これはラッキーです。悪いことをして、その報いをすぐ受けるなら、同じ間違いをしないように反省する事もできますが、悪いことをしても見つからない人は、悪事を重ねてしまい、死んでからまとめてその報いを受けるのかもしれませんよ。

他人の事なんか言えないけどさ

　旅暮らしの生活を続ける寅さんが、相変わらずだと聞いたリリーさんが呆れていますが、相変わらず自分も同じような生活をしているので責められないと自覚しています。自分の事を棚に上げて人を批判する人も多いですが、自分の立場をわきまえている人は、簡単に他人を批判したりしないんでしょうね。

夢から覚めても、幸せとは限んないもの

　何かに希望を持っている時は、成功を夢見て生きていられるので幸せです。叶わぬ夢と知らされてしまうと、途端に地獄へ真っ逆さま、まだ可能性はあると夢を見ている時が一番幸せなのかもしれません。『生きている間は全て夢』というセリフが出てきますが、『ステイ』という映画でも紹介されている通り、仏教では、この世の出来事の全ては実態が無く夢のようなものだという考えがあります。そう考えるとツライ人生も、少しは気が楽になりますが、どうせならいい夢を見たいですね。

 

泣くな、みっともないから

　沖縄の病気に入院しているリリーの元に、寅さんが見舞いにかけつけるシーン。寅さんの大げさな振る舞いに、同室の患者さんたちが驚き、戸惑う姿は笑えますが、寅さんに再会した時のリリーさんの涙には、誰もがもらい泣きしてしまうでしょう。

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