ロンドンを再開発するプロジェクトを担当している建築家ウィルは、恋人のリヴ、そして彼女の娘ビーと一緒に家族同様に暮らしていた。しかし、リヴは、極度に神経質な体質の娘を持つ罪悪感から、ウィルと入籍はせず、ウィルも、家族のように同居してくらしながらも疎外感を感じていた。ある日、ウィルが働いているオフィスで窃盗事件が起こり、仕事のデータが入ったパソコンが全て盗まれてしまう。その後も盗難騒ぎが続き、ウィルは、自らオフィスを見張り、盗みに入った少年を目撃して追跡する。そして、少年の住む住宅を確認し、少年の母親のアミラを訪ねるが、ボスニアから移住してきたアミラの半生を知ると、ウィルは盗難事件の事は話さず、彼女に魅かれてゆく・・・。

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　２００６年イギリス・アメリカ合作。監督は『イングリッシュ・ペイシェント』『コールド・マウンテン』などのアンソニー・ミンゲラ、出演は、『ロード・トゥ・パーディション』『オール・ザ・キングスメン』などのジュード・ロウ、『ショコラ』『存在の耐えられない軽さ』のジュリエット・ビノシュ、そして、『フォレスト・ガンプ』『プレッジ』などに出演しているロビン・ライト・ペン。ロンドンを舞台に、男女の微妙な恋愛感情と、母親の子供に対する愛情を描いた秀作。

　アンソニー・ミンゲラ監督の描く人間の行動の不条理、繊細な感情表現は秀逸で、芸術的な映像、音楽も素晴らしいですが、落ち込みます。どっぷりと悲しみに浸ってしまうような映画なので、明るい映画が好きな方には向きません。ロンドンが舞台になっていて、寒色系の色合いを強く出した寒々しい映像をベースに、恋愛、親子の愛情をテーマにしていますが、サラエボ内戦の影響で移住してきた親子も重要な登場人物となっていて、政治的な要素も入っています。さらに理不尽な世の中に対する皮肉も込められていて、お世辞にもハッピーな気分になれる映画ではありません。しかし、さすがアンソニー・ミンゲラ監督！愛し合っていながらお互いに心を開けないカップル、息子を守る為に、悪事を働いてしまう母親、そして弱者に冷たい世の中・・・。色々な意味で感動的な作品で、切なさ、人間の根源的な悲しみが心に沁みる作品です。決して派手な音楽ではありませんが、この映画の音楽も印象的で、ピアノの響きがいつまでも耳に残り、心を震わせます。

ロンドンには空気がない

　盗難事件を担当する刑事のセリフです。人口過密に対する意見だと思いますが、この作品の中で、刑事さんが社会に対する批判役になっています。警察に捕まっても金持ちは弁護士を雇って懲役を逃れるが、貧乏人は刑務所に直行、下っ端の犯罪者を捕まえても、本当に悪い人間は逮捕できないなど・・・、貧しく立場の弱い人間が、どれほど現在の社会制度の犠牲になっているかという事を痛感させられます。また娼婦の女性が、『動物は嘘をつかない』と吐き捨てるシーンも、嘘ばかりついている人間に対する皮肉として印象に残ります。

どれほど長い間、私が孤独だったか・・・

　内戦の為に夫を亡くしてから、シングル・マザーとして頼れる人も無く生きてきたアミラの孤独感が切実に感じられる言葉です。三角関係をテーマにした映画は、必ず不幸になる人がいて気が滅入りますが、こんなセリフが入ってくると、なお更落ち込みます。やっと愛する人、自分を守ってくれる人に出会えたと思ったら、騙されていた・・・。んー最悪ですね。やっぱり落ち込みます。

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ジュード・ロウ
ジュリエット・ビノシュ
ロビン・ライト・ペン
マーティン・フリーマン

 

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