フォリナー・デビュー！

　１９７７年発表、フォリナーのデビューアルバム。シングルカットされた『衝撃のファースト・タイム』『冷たいお前』などの大ヒットにより全米アルバム・チャート４位を記録するヒットアルバムになりました。イギリス人とアメリカ人の混合編成によるバンドとして注目されましたが、正統派のブリティッシュロック・サウンドを基本にしながらも、ミック・ジョーンズのハードなリフ、ポップセンスと、ちょっとだけプログレ色のあるアレンジが、独特の個性を出しています。

　元キング・クリムゾン、マクドナルド&ジャイルズのメンバーであるイアン・マクドナルドが参加しているバンドという事で日本でも注目されていましたが、サウンド的には、ギターのリフを中心にしたポップなハードロック系のサウンドで、プログレッシブ・ロックのファンにとっては、ちょっと期待はずれだったかもしれません。ギタリストのミック・ジョーンズとギター、キーボード、サックスなどをプレイするイアン・マクドナルドが中心になって結成されましたが、収録曲のほとんどは、ミック・ジョーンズの作品で、イアン・マクドナルドはアレンジ面でキラリと光るセンスを演出しているものの、作曲に参加しているのは１曲のみで、裏方に徹しています。４曲目の『ヘッドノッカー』などは、リラックスしたアメリカンロック的な雰囲気もありますが、全体的には、ブリティッシュロック色の強いアルバムで、イアン・マクドナルドのマルチプレイヤー、アレンジャーとしての才能の生かされた空間表現力のあるアレンジとミック・ジョーンズの強烈なギターのリフ、そして、スケールの大きなビートを作りながらも、芸達者なリズムセクションによって、玄人好みの正統派のロックアルバムに仕上がっています。ヒットを狙えるポップセンスとハイセンスでテクニカルなプレイを兼ね備えているので、リスナーだけでなく、プロ・アマ問わずミュージシャンにも絶賛されました。

悲しきイアン・・・

　ほとんどの曲をミック・ジョーンズとルー・グラムが作曲していますが、イギリス的な情緒とプログレッシブロックのようなスケールの大きな空間表現力は、間違いなくイアン・マクドナルドのセンスが生かされていると思います。彼が参加していなければ、これだけ完成度の高いアルバムにはなっていなかったでしょう。マクドナルド＆ジャイルズのファンにとっては、このアルバムは決して満足のいくアルバムではないかもしれませんが、伝説的な名盤としてプログレファンに愛されているマクドナルド＆ジャイルズのアルバムも、商業的な成功は得られず、才能に見合った報酬が得られなかったイアン・マクドナルドとしては、その苦い経験から、自分の才能を抑えてでも、商業的な成功が欲しかったのかもしれません。自分の才能を抑えながらバンドに貢献していたイアン・マクドナルドが、後にクビになってしまうというのは皮肉な話ですが、アレンジャー、マルチプレイヤーとしてのイアン・マクドナルドの才能を楽しめるという意味では、プログレファンにとっても貴重なアルバムだと思います。

　  　

 

■　つめたいお前　■

　シンプルで鮮烈なエレクトリックピアノのイントロから、７０年代のロックを象徴するようなポップなメロディ、そしてミック・ジョーンズの印象的なギターソロ、どれを取っても完璧なポップソングです。このアルバムが発売された頃は、私は、まだ子供だったので、すぐにアルバムを買うほどお小遣いが無く、この曲のシングルレコードを買って、何度も何度も聴いていました。子供の頃の思い出でもありますが、今聴いても新鮮な感動を与えてくれる名曲です。

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ＤＶＤオーディオがオススメですが・・・

　後期の商業路線が強くなったファオリナーを嫌うファンにとっては、初期の名盤として最も人気の高いアルバムで、ＤＶＤオーディオでも発売されていました。残念ながら廃盤で、今は入手困難ですが、まだ、ロックバンドとしてのプライドが満ち溢れていた頃のフォリナーの名盤を高音質で聴きたいという方には、絶対必需品でしょう。ＤＶＤオーディオでは、ヴォーカルや楽器の音の質感が太く明瞭になり、特に、ドラムの音がクリアになった事によって、大口径のバスドラの音圧やタム類の音抜けの良さを体感できます。また、空に突き抜けていくようなコーラスワークの伸びも強烈で、今さらながらですが、フォリナーというバンドの楽器のアレンジ、コーラスアレンジのセンスの良さを実感させられます。そして、マルチチャンネルでは、空間表現力の素晴らしさが実感できるサウンドになっていて、２０畳ぐらいのスペースを音場が満たしてしまうようなスケールの大きな音場空間を満喫できます。ステレオ２ｃｈとマルチチャンネル５．１ｃｈの音源が収録されているので、５．１ｃｈシステムのある方はもちろん、ステレオシステムの人も高音質でフォリナーの名盤を楽しめます。ボーナストラックとして、『衝撃のファースト・タイム』『つめたいお前』のプロモーションビデオが収録されているので、懐かしの映像を楽しめますし、最近発売されたリマスター盤にボーナストラックとして収録されているデモテイクの４曲もちゃんと収録されています。初期のフォリナーのファンにとっては、まさに至れり尽くせりの貴重盤になっています。ＤＶＤオーディオの規格が終了してしまったので中古商品でのみ入手可能ですが、イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』や、フリートウッド・マックの『噂』などのＤＶＤオーディオに比べて発売数が少ないらしく、かなりレアなアイテムで、見つけるの苦労すると思います。アメリカのアマゾンなどでも中々見つかりません。

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