マイク・オールドフィールドとサイモン・フィリップス、そして・・・

　ヨーロッパで大ヒットしたシングル『ムーンライト・シャドウ』を収録した１９８３年度作品。映画『エクソシスト』に使用された『チューブラ・ベルズ』が大ヒットして一躍注目を浴びたマイク・オールドフィールドですが、１曲２０分前後という大作志向で、どちらかと言うとプログレッシブロックとして認識されていました。しかし、８０年代になってロックの商業化が顕著になり、レコード会社からのプレッシャーもあって、このアルバムでは、３分前後のポップソングを収録しています。アナログ盤で発売された時は、Ａ面に１曲、Ｂ面に５曲という構成で、マイク・オールドフィールドらしい大作が１曲と、ポップスファンにも受け入れられるような演奏時間の短い曲をバランスよく収録しています。

 

　すべての楽器を自分で演奏できるマルチプレイヤーとして有名なマイク・オールドフィールドですが、このアルバムではサイモン・フィリップスがドラムとパーカッションを担当し、リズムアレンジにバリエーションが広がり、曲に躍動感、意外性のあるアクセントが加わっています。さらに、ゲストヴォーカリストとして、イエスのジョン・アンダーソンが参加しているのもプログレファンには嬉しいところです。芸術的なアルバムジャケットですが、このアルバムジャケットのイメージをそのまま音楽にしたような透明感のある曲でまとめられています。月から地球へと届く光によってできる透明感のある空間を、音楽で表現したような独特の透明感と浮遊感のあるサウンドは、マイク・オールドフィールドのアルバムの中でも最も評価が高く、ポップスファンにも受け入れやすい曲を収録しているので、プログレファンだけでなく幅広いファンから支持されている名盤です。ハードロックファン、アメリカンロックのファンにはすすめられませんが、ポップスファンなら充分満足できると思います。

 

　  　

 

■　タウラス 3 　■

　マイク・オールドフィールドの驚異的なギターテクニックと音楽的なセンスが見事に結実した名曲。はじめて聴いた時は本当にショックを受けました。流れるようなメロディに驚きの展開、そしてサイモン・フィリップスの強烈なドラムがからんできます。一度聴いたら絶対に忘れられない衝撃があります。特にギタリストの方には聴いていただきたい名曲です。

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サイモン・フィリップスの憂鬱

　このアルバムに参加しているサイモン・フィリップスのインタビューによると、このアルバムの製作時に、レコーディングエンジニアがクビになり、サイモン・フィリップスがレコーディングエンジニアもするハメになってしまったそうです。当時、サイモン・フィリップスはレコーディングエンジニアとしての知識も経験もなく、かなり苦労したそうですが、そのおかげで、今はレコーディングエンジニア、ミキサーとしての技術も身についているそうです。災い転じて福！という感じですね。

ＨＤＣＤも発売されています。

　このアルバムは、高音質リマスターＣＤとしてオーディオファンに注目されたＨＤＣＤでも発売されていました。知る人ぞ知る名盤で、プログレファンに人気のあるアルバムなので、すぐに廃盤になってしまいましたが、中古で探せば見つかるかもしれません。通常のリマスター盤に比べて、かなり音質が良くなっているので、マイク･オールドフィールドのイマジネーション、サイモン･フィリップスのドラムセンスを生々しく体感できます。

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