日本では無名な超実力派トップバンド
南アフリカ出身のデイヴ・マシューズ(Vo.G)を中心にカーター・ビューフォード(Ds)、ステファン・レッサード(B)、リロイ・ムーア(Sax)ボイド・ティンズレー(Vln)の5人のメンバーで1994年にデビュー・アルバム『アンダー・ザ・テーブル・アンド・ドリーミング』を発表。シングル『ホワット・ウッド・ユー・セイ』がヒットしたこともあり、このアルバムは400万枚を超えるメガ・ヒットとになります。セカンドアルバム『激突!』も、全米チャート初登場2位にランク・インしダブル・プラチナ・アルバムとなり、このアルバムはグラミー賞を獲得しました。その後も発売したアルバムは全て大ヒットを記録し、アメリカでは学生を中心に人気があり、映画でも曲が使用されるなどメジャーなバンドですが、なぜか日本ではほとんど知られていません。
デビュー前、デイヴ・マシューズはクラブでバーテンをしながら、バンドメンバーを探していたそうですが、優秀なミュージシャンが多く出演するクラブで品定めをした甲斐があって、最高のバンドメンバーを獲得しました。どのメンバーも、ジャズ系のテクニカルなプレイを得意としているようで、ロックのジャンルの中では最高のレベルのプレイヤーが揃っています。特にドラムのカーター・ビューフォードは、その壮絶なプレイが広く認められヘヴィメタル系のギタリストのアルバムにゲスト参加するなど、プロにも一目置かれる存在です。こんな最高のテクニックを持つメンバーが、洗練されたアレンジでデイヴ・マシューズの作る哲学的な歌詞、美しいメロディ色を付けるのですから、もう最高です。音楽的にはジャズ的なセンスが強いアレンジでアメリカンロックを演奏するタイプですが、リード楽器としてバイオリンが活躍する曲ではカントリー風の味わいも感じさせます。デビューアルバムから3枚目までは、スティーブ・リリーホワイトがプロデュースを努め、アルバムの音質もスティーリー・ダン並みに高音質です。アメリカでの人気は絶大で、多くのハリウッド映画で彼らの曲が使用されているので、『マトリックス・リローデッド』、『ミスター・ディーズ』などの映画のワンシーンで、デイヴ・マシューズ・バンドの曲を聴いている方は多いと思います。
では、なぜ日本で人気が無いのか?レコード会社が本気でプロモーションしていないと言う事もあると思いますが、デビューから3作目までのアルバムでは、ギターを担当しているリーダーのデイヴ・マシューズは、アコースティックギターのみでレコーディングしており、ギターが目立つバンドでは無いという面がデメリットになっていると考えられます。日本のロックファンにとっては、ハードロックに限らず、カリスマ的なギタリストのいるバンドが熱狂的に受け入れられる傾向があり、ギターが目立たないバンドは、なかなか人気が出ないという現実があります。その為、ギターが目立たず、リードプレイをバイオリンやサックスが担当するアレンジがロックとしては珍しいという個性が災いしているのでしょう。また、デイヴ・マシューズ・バンドの曲はメッセージ性のある深遠な歌詞が多いものの、近年主流のダンサブルなビートを中心にしたアレンジでは無いので、ビートを強調したダンスソングを好む日本の若年層には魅力が感じられないのかもしれません。抜群の演奏力、卓越したアレンジのセンス、メッセージ性の高い歌詞など、どれを取ってもアメリカでトップレベルのバンドですが、ジャンル分けするのが難しい独特の音楽性の為に、日本ではほとんど知られていないのかもしれません。とにかくプレイヤーのセンスがいいので、スティーリー・ダンや、ボズ・スキャッグスなどが好きな方や、バンドをやっている方には是非聴いていただきたいアーティストです。一度彼らの音楽にハマると、彼らの音楽無しでは生きられなくなります。