1989年アメリカ作品。監督は『トータル・フィアーズ』のフィル・アルデン・ロビンソン
、出演は、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』のケヴィン・コスナー、『ストリート・オブ・ファイアー』のエイミー・マディガン、『グッドフェローズ』のレイ・リオッタなど。往年の大リーガーが集結してドリームマッチを開催する手助けをしようとする男と、その家族の愛情を描いたハートウォーミングなファンタジー作品。
大人の為の渋いファンタジー作品としてオススメできる名作です。最近のSF作品のような派手な特撮は一切ありませんが、時空を超えて往年の大リーガーが現代でプレーするという物語は、タイムトラベルや天国の存在など超自然的な空間を感じさせてくれるファンタジー作品として楽しめます。そして、ファシズムに断固反対し、60年代の平和思想に回帰しようとする主人公の妻の姿や、大好きな野球よりも人を救う為に医師を志す無名選手の登場は、現代社会に失われつつある人間の善意を思い出させてくれて心が癒されます。そして、主人公のレイ・キンセラが亡くなった父親に気持ちを伝えられなかった無念の感情は、同じような経験を持つ人にとって忘れられない感動となって心に残ると思います。どちらかと言うと地味な作品ですが、『金をかけなくても名作が作れるというお手本のような映画』と、『2039年の真実』で有名な作家である落合宣彦さんも絶賛しています。主要登場人物である大リーガーのシューレス・ジョー、タイ・カップという選手が、1900年代初頭の有名選手なので、日本人には馴染みが無いという点と、60年代に主流だった思想が理解できないとユーモアが分らないという点が、ファンを選んでしまうと思いますが、心癒される感動作としてオススメできる名作です。
BGMにはオールマンブラザーズ・バンドの名曲が使用されていますし、60年代を思い出させてくれる映像やセリフが色々と出てくる作品なので、60年代を経験した人、60年代の芸術、文化、思想に関心のある人なら一層楽しめる作品だと思います。個人的には、20代で最初に観た時よりも、40歳を過ぎた頃の方が感動が大きく、生涯忘れられない作品の一つになっています。若い頃に観て感動できなかった人にも、もう一度観ていただきたい作品です。
金なんかいらない、プレーできれば
八百長に加担したとして球界を追放されたシューレス・ジョーのセリフですが、野球やサッカーなどのスポーツにしても、音楽や演劇などの芸術にしても、本当に心から愛している事なら、お金なんかもらわなくても、幸せですよね。そういう意味ではアマチュアの方が純粋な気持ちを保てるのかも。
小さな事にこだわるのは良くない
家系が火の車なのに、謎を解く為にシカゴに行くと言い出したレイに、妻のアニーは大反対。でも、目先の事に囚われすぎると、本当に大事なものを失ってしまう事も多いんですよね。
人生の節目となる瞬間は、自分ではそれとは分らない
後になって人生を振り返ってみると、どのポイントが岐路になったか分りますが、今目の前にある選択肢が、後の人生を大きく変えてしまうかどうかは、その時点では分りません。そういう意味でも、一つ一つの選択は慎重にした方がいいですね。
失われた善が、再び甦る可能性を示してくれる
現代社会、人間に対する皮肉の意味もあると思いますが、人間社会では善が失われ悪がはびこっています。いつか人間が善意を取り戻し、善が再び甦ると信じたいですね。