アメリカ、ニューヨークでアラブ系のテロリストによるバス爆破事件が発生し、FBIのハブ・ハーバード捜査官が捜査を担当する事になる。事件の後、ＣＩＡのエリースという女性エージェントが捜査にハブに協力を申し出て、彼女の情報源を元に２４時間体制でテロリストの捜査が行われるが、テロ事件が続発し、ニューヨークは、デブロー将軍が指揮する軍隊により戒厳令下におかれる事になる・・・。

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　１９９８年、アメリカ作品。監督は、『レジェンド･オブ･フォール・果てしなき想い』『ラスト･サムライ』などのエドワード・ズウィック。出演は、『アルマゲドン』『ダイ･ハード』のブルース･ウィリス、『マイ･ボディガード』『ザ･ハリケーン』のデンゼル･ワシントン、『めぐり逢い』『心の旅』などのアネット･ベニングなど。アメリカで起きたアラブ系テロリストの連続テロで、戒厳令下に置かれるニューヨークの混乱を描いたアクション映画。

　この作品は、１９９８年に公開された当初は、ブルース･ウィリスがラジー賞を受賞するなど、アメリカ国内では評価が低く、大ヒット作、注目作という評価は得られませんでしたが、２００１年のアメリカ同時多発テロ事件にそっくりな内容で、皮肉な事に、２００１年のテロ事件の後に再び脚光を浴びました。実際には軍による戒厳令が敷かれるまでには至りませんでしたが、事件の後の混乱、アラブ系アメリカ人に対する差別など、ニューヨークでは、この作品と似た状況になってしまった為、アラブ系のテロリストが、この作品をヒントにテロを計画したという噂もありました。公開当初は、アメリカ本土での戦争という設定に現実味がありませんでしたが、２００１年の悲劇の後では、先見の明があった作品、テロに対する警告を与えてくれた作品という感じもします。事件の発端となるのはイスラム系指導者の拉致事件という設定になっていて、実際の事件とは動機が違いますが、イスラム系の国の反米感情、テロリストの殉教などは、リアリティがあり、ゾッとする場面も少なくはありません。また、もしニューヨークでテロが続発したらどうなるかというシュミレーションの元に描かれた作品なので、ニューヨークに限らず大都会で同様の状況になったら、どうなるのか？という現実的な問題としても興味深い作品だと思います。ただ、政治や宗教に関する知識がある程度ないと、理解しづらい点もあり、テロ事件の解決という結末が用意されていないので、エンディングにはインパクトがありません。アラブ系のテロに対する決着がつかないというエンディングはリアルですが、アクションを楽しむ娯楽作品としては、あまりオススメできません。

善に近い悪

　人を殺す、しかも爆弾などを使って大量殺戮する事は、絶対に善だとは思えませんが、宗教の違いによって価値観が違っていると、何が善で、何が悪なのかという基準が変わってしまいます。宗教の違いによる対立から、指導者が信者を洗脳し、人間兵器として利用する場合も多いようですが、テロ行為が善だと信じ込まされている殉教者も、ある意味では被害者なのかもしれません。

アラブ系住民を、戦時中の日系人のように・・・

　第二次世界大戦の時に、アメリカに住む日系人が隔離されたように、事件の後に、アラブ系住民が隔離されるシーンがあります。同じ民族だからという理由で、善良な市民が偏見と悪意にさらされてしまうのは、気の毒でなりません。ごく一部の犯罪者の為に、民族全体を敵対視するのは、八つ当たりのようなもので、公平な態度とは言えません。こんな事が二度と起こらなければいいのですが・・・。

天国で７０人の処女を

　いったい何を根拠に、こんな条件が与えられるのか分りませんが、テロによる殉教者には、死後に、こんなご褒美が用意されているそうです。私は、キリスト教徒にもイスラム教徒にも偏見はありませんが、誰がどう考えても、人殺しをすれば天国に行けるという教えは、納得がいかないと思います。政治的な指導者が、自分に都合のいい宗教解釈で洗脳するんだと思いますが、殉教者たちは本当に天国に行っているんでしょうか？

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