アメリカ人よりアメリカ的なバンド
アメリカ人のレヴォン・ヘルム(Ds)と、カナダ人のロビー・ロバートソン(G)、リック・ダンコ(B)、リチャード・マニュエル、ガース・ハドソン(Key)で結成され、ザ・ホークスというバンド名でロニー・ホーキンスのバックバンドとして活動を開始、1965年にボブ・ディランのバックバンドを努めるようになり、コンサートに集まるファンの間で、ザ・バンドと呼ばれて親しまれ、後にバンド名をザ・バンドに変更。1968年に伝説的な名盤、『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』でデビュー。このアルバムに収録されていた『ザ・ウェイト』は、アメリカン・ニュー・シネマの傑作『イージー・ライダー』にも使用され、今では、ロックスタンダートとして知られています。その後も、『南十字星』などの名盤を発表し、順調に活動していましたが、1976年に『ラスト・ワルツ』というタイトルで映画化された伝説的な解散コンサートを行ない、オリジナルメンバーでの活動に終止符を打ちます。その後、各メンバーはソロ活動を経て、1983年にギタリストのロビー・ロバートソン以外のメンバーが集まり、再結成、全盛期ほどの活躍は出来ませんでしたが、マイペースで活動をしていました。1994年にはロックの殿堂入りを果たしました。
アメリカ人のメンバーはレヴォン・ヘルムだけで、他のメンバーはカナダ人ですが、カントリー、ブルースなどのアメリカ的な音楽をロックに融合させた音楽性は、最もアメリカ的なバンドと評されます。ハードロックのような強いギターのリフや、プログレ系バンドような超人的な楽器のテクニックを前面に出すタイプではなく、飽くまでメロディ、歌詞に重点を置いて、人々の心に沁みるようなソウルフルな曲が多く、エリック・クラプトンなどにも多大な影響を与えています。アメリカ人でなくても、なぜか懐かしさを感じさせるメロディの数々は、世界中のロックファンに熱狂的に受け入れられています。
音楽的にも、いい意味で田舎臭いと言うか牧歌的ですが、メンバーの人間性も、気さくで親しみやすいようで、ジャンルに関わらず、様々なミュージシャンと親交があるようです。映画『ラスト・ワルツ』に出演者の豪華な顔ぶれには、本当に驚きます。多くのアーティスト、ファンに愛される人柄が、そのまま音楽性にも表れているような気がします。
ロビー・ロバートソンとレヴォン・ヘルム
ザ・バンドの解散の原因は、ロビー・ロバートソンとレヴォン・ヘルムの不仲が原因と言われていますが。映画『ラスト・ワルツ』の中でロビー・ロバートソンは『偉大なロックアーティストがロックのために死んでいった。自分たちも怖くなっている』と語っているので、ロビー・ロバートソンが解散を決めたような状況だったのがうかがえます。バンド結成当時はミュージシャンとしてのキャリアの長かったレヴォン・ヘルムがリーダーだったようですが、作曲、アレンジなどで、バンドの中心的な存在になったロビー・ロバートソンが主導権を握るようになり、二人は、今でも険悪な仲といわれています。多分、どっちもどっちなんでしょうけど、ミュージシャンを続けてると、早死にしちゃうとか言って、バンドを解散させるような人は、私は好きになれませんね。私の友人も、ロビー・ロバートソンの、この発言には苦笑していました。ジャニス・ジョプリン、ジム・モリソン、ジミ・ヘンドリックスなどのミュージシャンは、普通のミュージシャンが何十年もかけて生み出す曲、エネルギーを、短い期間でやりつくしてしまったというか、燃え尽きたから寿命が短かったんじゃないかと思いますし、何か、勘違いしてますよね、彼は。『ラスト・ワルツ』の映画に関しても、マーティン・スコセッシ監督に、自分だけカッコよく映るように編集してもらっていたそうなんで、人間的にも、あまり尊敬できるタイプではありませんね。