満男は地方都市をまわる営業の仕事をしている。奄美大島の小さな島で再会した後、１年以上も帰ってこない寅さんに会いたがっている満男は、ある駅のホームで寅さんの幻を見る。そして、リリーと寅さんの長い物語を思い出す・・・。

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　１９９７年日本映画。監督は『学校』『息子』『幸福の黄色いハンカチ』の山田洋次。出演は、渥美清、倍賞千恵子、浅丘ルリ子など。シリーズ２５作（１９７９年）を再編集した特別編。

　１９９６年に渥美清さんが亡くなり、１９９５年度作品『男はつらいよ・寅次郎紅の花』がシリーズ最後の作品になりましたが、『男はつらいよ』シリーズのファンの要望に答えるために、『男はつらいよ・ハイビスカスの花』を、満男が回想するという形で再編集し、特別編として公開されました。満男の回想シーンではじまり、『男はつらいよ・忘れな草』『男はつらいよ・寅次郎相合い傘』のダイジェスト映像が挿入され、ＢＧＭや音響効果は作り直されていますが、本編の内容は『男はつらいよ・ハイビスカスの花』と同じです。全４８作品の中で、山田洋次監督自身が最も好きな作品をリニューアルした作品なので、かなり思い入れが強いようで、オリジナルの『男はつらいよ・ハイビスカスの花』の完成度を、更に高めたような力作になっています。オープニングとエンディングに新たに撮影された映像が挿入され、ＣＧによって寅さんも登場しますが、作品の内容自体は、『男はつらいよ・ハイビスカスの花』と同じなので、新作として期待し無い方がいいですが、もう寅さんには会えないんだという事を実感させられる作品なので、『男はつらいよ』シリーズの終焉をハッキリと感じさせてくれる作品なので、シリーズのファンなら絶対に必見の作品だと思います。

　複雑な気分させられる作品です。『男はつらいよ・忘れな草』『男はつらいよ・寅次郎相合い傘』『男はつらいよ・ハイビスカスの花』の総集編として楽しめるのはいいんですが、ＣＧで挿入された寅さんの映像は、もうこれで終わりなんだ！とクギをさされたような気がして、悲しくなります。頭で分ってはいても、どうしても認めたくないこと、信じたくないこともあるものです。この作品には、ファンに対する山田洋次監督の感謝の気持ちや、作品に対する愛情が感じられますが、同時に、ファンに対しての最終通告のような思いも感じられ、体の力が抜けてしまいます。

伯父さんに会いたいな

　この言葉は、『男はつらいよ』シリーズのファン全ての気持ちを代弁しているんでしょうね。もっと寅さんの恋愛を観たい、寅さんの人情味溢れるエピソードを楽しみたいというファンにとっては、この言葉だけでも泣けてきます。

あぶくみたいなもんだよ

　『男はつらいよ・忘れな草』の名場面でのセリフです。しっかりと根を張って生きている人間には、地域や家族との強い結びつきが生まれ、お互いになくてはならないという存在感が生まれますが、寅さんやリリーさんのような旅暮らしの生活は、人間の結びつきが希薄になり、いてもいなくても同じ、あぶくみたいな存在になってしまうのかもしれません。自由を手に入れても、その代償も大きいのかもしれませんね。

 

寅さんの幻

　駅のホームで寅さんが手を振る姿がＣＧで挿入されていますが、幻なんだ、もう絶対に会えないんだと痛感させられて、つらい気持ちになります。

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