1976年アメリカ作品。監督は『ゴールデン・チャイルド』『クール・ランニング』などのマイケル・リッチー、出演は『ペーパー・ムーン』のテータム・オニール、『J・F・K』のウォルター・マッソー、『ダーティー・メリー/クレイジー・ラリー』『トワイライト・ゾーン』などのビック・モロー。スポーツ映画の傑作と言えばコレ。悪ガキばかりの弱小少年野球チームの奮闘を笑いと涙で描く感動の名作。
まず、この映画の登場人物のユニークなキャラクターの魅力に引き寄せられます。いつでもケンカ腰のターナー、子供とは思えないような立派な体格にエンゲルバーグ、洟垂れ小僧のルーパスなどなど、子供たちの強烈な個性が魅力的です。そして、バターメーカーの無気力な酔っ払いのキャラクターも、子供たちと好対照で笑えます。ちょっと大げさに言えば、この作品が、近年の『陽だまりのグラウンド』や『スクール・オブ・ロック』など、子供を主役に描いた大ヒット作のすべての基礎になっていると思います。野球に興味のない方でも充分に楽しめるストーリーとユニークなキャラクターならではのユーモアのセンスは、時代を超えて、多くの映画ファンに受け入れられると思いますし、笑って泣ける感動作ですが、意外に深い映画なので大人になってからも充分に楽しめます。
子供の頃に、『がんばれ!ベアーズ』のテレビ版が放映されていたので、この作品だけでなくテレビ版にもすっかりハマりましたが、やっぱり映画の方が感動できますね。子供の頃は、子供たちのユニークなキャラクターを面白おかしく楽しめるのが魅力でしたが、大人になってから観ると、子供たちの繊細な感情、それに対する大人のエゴなどが痛いほど伝わってきます。子供を自分のプライドの為に利用する人は、そんなに多くは無いと思いますが、自尊心の為に部下や同僚に過剰な労働を強いている管理職の人は多いような気がします。他人の気持ちも考えず仕事の鬼になっているような人には、自分の行動を考え直す機会を与えてくれる作品なので、自分の家族や友人で、仕事の鬼になっている人にすすめてみてはいかがでしょうか?
奴らに勝ちたくないのか?
全くやる気の無かったコーチのバターメーカーも、子供の純真さに打たれて、ベアーズを強いチームにしようと必死になります。そこまでは、良かったんですが、勝ってヤンキースのコーチを見返してやりたいという自尊心の為に、卑怯な手を使うようになり、自分を見失っていきます。子供たちの冷たい視線にさらされて、はじめて自分のしている事に気づくシーン、子供たちの視線には、感動するというよりは、自分の間違った生き方を非難されたような焦りさえ感じます。この作品は娯楽作品として楽しめば、それでいいと思いますが、実は、アメリカン・ニュー・シネマのような、反骨精神も描かれています。自分の利益や自尊心の為に子供を利用する大人が体制側で、純粋に野球を楽しもうとする子供たちが、反体制派と考えられます。ベアーズの宿敵であるチームの名前がヤンキースになっているあたりも、そんなニュアンスが感じられます。