厳しい時代だ、そして、ますます厳しくなっていく・・・
1984年発売。全米チャートNO.1を記録し、全世界で2000万枚以上のセールスを記録したブルース・スプリングスティーンの最大のヒットアルバム。このアルバムはアメリカで最も売れたロックアルバムとしても知られています。大ヒットシングル『ボーン・イン・ザUSA』『ダンシング・イン・ザ・ダーク』『グローリー・デイズ』『アイム・オン・ファイアー』『マイ・ホーム・タウン』などを収録。
このアルバムが発売されるまでは、ブルース・スプリングスティーンの名は、ロックファンにとっては有名だったもの一般の人には無名でした。ところが、このアルバムの世界的な大ヒットによって、ロックファン以外にも広く名前を知られるようになりました。MTVの全盛期にシングル用のPVを積極的に製作してプロモーションした事も成功し、次々にシングルヒットが生まれ、マイケル・ジャクソンなどと共に80年代を代表するアーティストとして広く知られるようになります。ブルース・スプリングスティーンの最大のヒットアルバムですし、シングルヒット曲も多数収録されているので、ポップスファンなどには薦めやすいのですが、『ザ・リバー』や『トンネル・オブ・ラブ』などに比べると重厚感に欠けるというか、あまり大きな感動が残らないためブルース・スプリングスティーンのファンの間では評価が低いアルバムです。『ボビー・ジーン』『ノーサレンダー』など友情をテーマにした曲やアメリカの若者の心を代弁するような歌詞は健在ですが、シングルカットしやすい短くポップな曲でまとめてある為、歴史的な名盤という程の作品としては認められていません。シリアスな歌詞は苦手、ポップなヒット曲を楽しめればいいというファンにはオススメできます。
ブルース・スプリングスティーンの才能が世界中の多く人に知られるようになったという意味では、重要なアルバムですが、このアルバムの成功によってブルース・スプリングスティーンのメッセージ性の強い歌詞を理解できないポップスファンにも受け入れられたという事に関しては、昔からのファンは、かなりイライラさせられました。私の友人も『あいつら全然分かってない!』と怒っていました。そして、何よりブルース・スプリングスティーン自身も商業的な成功によって代償を払う事になります。驚異的なセールスによる裕福な生活とコンサートツアーの成功、これまで以上に名声を得たブルース・スプリングスティーンは、結婚生活の破綻と失望という代償を払う事になります。名盤『ザ・リバー』の『プライス・ユー・ペイ』という曲で、払うべき代償について歌ってましたが、まだ払うべき代償が残っていたようです。