寂れていく都市の情景、そしてそこに住む人たち・・・
1982年発売、ブルース・スプリングスティーン のヴォーカル、ギター、ハーモニカのみで録音され当時のアメリカ労働者階級のエピソードを淡々と歌ったシンプルでメッセージ性の強い作品。全米チャート3位を記録。彼の作品の中では地味な作品ですが、ギターとハーモニカの演奏だけというシンプルな演奏の為、ブルースの歌声が心に染みます。『ネブラスカ』『アトランティック・シティ』『ハイウェイ・パトロールマン』などを収録。
空前の大ヒットとなった『ボーン・イン・ザ・USA』に比べると信じられないほど地味な作品ですが、大衆受けする大ヒット作品よりも、心に残るのはなぜでしょうか。本作は、Eストリート・バンドの演奏は一切入っていません。ブルース・スプリングスティーンが自宅の4chレコーダーで録音した物をそのままレコード化した作品で、かなりプライベートな作品かと思いきや、彼自身についてのテーマを作品にしたわけではなく、この時代の一般的なアメリカ人の物語を淡々と弾き語る曲ばかりが収録され、当時のアメリカ社会という枠組みの中で、追い込まれてしまう人間の悲劇がテーマになっています。アメリカは変わってしまった。もう労働者に住む安い国ではなくなってしまったというメッセージが強く感じられ、今聴いてみると、時代が厳しさを増し、このアルバムが発売された頃よりも酷くなっている事に唖然とさせられます。この当時は、アメリカ人にとって共感できる物語が多かったのかもしれませんが、今となっては日本も同じ。今だからこそ聴いて欲しい名盤です。
ヴォーカル、ギター、ハーモニカのみで録音されているのでノリのいいポップな曲を求めるロックファンには不満が残るかもしれません。このアルバムは、ブルース・スプリングスティーンの哲学的な語り部としての才能を楽しむアルバムなので、歌詞をじっくり読んで残酷なほどの現実を痛感しようという覚悟で聴いたほうがいいでしょう。一般的には地味な作品ですが、俳優のショーン・ペン なども、このアルバムに衝撃を受けたそうです。
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