あんな状況の中で、良くやったと思うよ

　ガールのセルフプロデュースでレコーディングされたセカンドアルバムは、レコード会社の発売の承認が得られず、レコーディング完了後、１年以上発売されずに、結局、レコーディングした音源をプロデューサーのナイジェル･トーマスがリミックスして発売されました。コンサートツアーの疲れ、デビューアルバム『シアー･グリード』の大成功によるプレッシャー、レコード会社との対立など、心身ともに疲れ果てた状況の中でレコーディングされたアルバムなので、デビュー当時のような爆発的なエネルギーは感じられませんが、『精神的にも、肉体的にもキツイ状況の中で、製作されたわりには、上出来だと思う』、と後にフィリップ・ルイスが発言しています。このアルバムでは、ドラマーのデイブ・ゲイナーが脱退した為、新メンバーのブライソン･グラハムがドラマーとして参加しています。

　ヘヴィメタルという音楽ジャンルとは違った魅力のある曲が多かったガールですが、このアルバムでは、バッド･カンパニー、シン･リジィなどのような、骨太なサウンドのハードロック的な作品が多くなり、ヘヴィメタル的な音楽性は、ほとんど無くなり、グラムロックの退廃的な要素を基盤にした古典的なハードロックという感じのアルバムに仕上がっています。ナイジェル･トーマスによってリミックスされて発売されましたが、元々の音源は、もっとラフで荒々しいハードロックだっった事が想像できます。デビューアルバム『シアー･グリード』の完成度が、あまりにも高く、衝撃的だったので、デビューアルバムと比べるとイマイチで、特にドラマーのメンバーチェンジにより、ビートアレンジが一辺倒で工夫が見られず、ガールの多用な音楽性が生かされていないのが残念ですが、フィリップ･ルイスが語っている通り、不本意な状況で製作されたアルバムとしては、なかなかの秀作であり、彼らの音楽的な個性を楽しめる貴重な音源である事には違いありません。

　オジー･オズボーンのソロ･デビューアルバム『血塗られた英雄伝説』がアメリカで大ヒットしていた為、同じ路線のヘヴィメタルアルバムでアメリカのマーケットでも大ヒットを狙いたいと考えるレコード会社と、あくまで自分たちのオリジナリティで勝負したいと考えるガールのメンバーとの間で意見が対立。レコーディングが完了していたアルバム１枚分の曲を破棄して、新たにレコーディングをするように要求するレコード会社とガールのメンバーのアルバムコンセプトが激しく対立して発売が遅れ、レコード会社とガールの妥協点ギリギリのラインで選曲したという窮屈な印象が感じられます。後に、未発表曲集として発売される『キリング･タイム』を聴くと、このアルバムの発売前にレコーディングされた曲に秀作が多い事に驚かされます。金儲けの事しか考えないセンスの無いレコード会社の重役のせいで、有能なバンドがつぶされてしまったという事実に怒りを覚えますが、何とか、この２枚目のオリジナルアルバムが発売されたというだけでも、ロックファンにとっては、ありがたいことかもしれません。

　  　

 

■　スウィート･キッズ　■

　デビュー当時からガールの重要なレパートリーになっていた曲で、パンクロック的なストレートなサウンドですが、フィル･コリンの強烈なギターソロには、興奮させられます。

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こちらもレアアイテム

　デビューアルバム『シアー･グリード』も、今では貴重盤で入手困難ですが、このアルバムは、さらにレアなアルバムで、このアルバムの存在すら知らない方も多いと思います。私はオークションで見つけて購入できたので、比較的安く手に入りましたが、『シアー･グリード』と同様に価格が高騰しています。『シアー･グリード』よりは、安く入手できますが、アメリカ、イギリスのアマゾンでも５０００円前後の価格になっているようです。

 

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