２０５４年のアメリカ・ワシントンD.C.では、殺人予知システムが確立され、殺人事件のない社会が実現されていた。しかし、犯罪予防局のスタッフであるジョン・アンダートンが、殺人事件の容疑者として指名手配されてしまう。ジョンは、自分が殺人を犯すのかどうか知る為に、警察の追跡から逃れ、殺人を予知する能力を持つプリコグの女性アガサを連れ出し、自分の無実を証明しようとするのだが・・・。

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　２００２年、アメリカ作品。監督は、『Ｅ．Ｔ．』『カラーパープル』などのスティーブン･スピルバーグ。出演は、『ラスト･サムライ』『バニラ･スカイ』のトム･クルーズ、『リクルート』『ニュー･ワールド』の コリン・ファレル、『エクソシスト』『勝利への脱出』のマックス･フォン･シドー、『ギター弾きの恋』『イン･アメリカ・三つの小さな願いごと』のサマンサ･モートンなど。殺人事件を予知するシステムが開発された近未来社会を描いたＳＦサスペンスアクション作品。

　プリコグと呼ばれる予知能力を持つ人間によって、殺人事件を未然に防ぐ事のできる近未来を舞台に、アクションとサスペンスを楽しめる娯楽作品ですが、運命は決まっているのか？人間に選択の余地は残されているのか？という根源的なテーマも内包した興味深い作品です。トム･クルーズ、コリン･ファレル、サマンサ･モートン、マックス･フォン･シドーという演技派の豪華な出演者と、スピルバーグ監督の緊迫感のある映像処理によって、緊張感があり、先の読めない展開を最後まで楽しめ、１００年先、１０００年先という遠い未来ではなく、数十年先という近未来の世の中の映像描写には、リアリティも感じられます。近未来ＳＦとして、サスペンス作品としての完成度は高く、十分にスリルを楽しめる作品ですが、未来を予知できる人間の苦悩や、主人公ジョンの息子を失った苦しみなどは役者任せで演出不足の感があり、アクション、サスペンスの娯楽性を追及しすぎて、運命論についての解釈など観念的な部分や、感動的な要素が弱くなっていて、ジョンの息子がどうなったのか？という謎も明かされないまま曖昧で安易なエンディングになっているのが残念です。このあたりが、作品に哲学感の無いスピルバーグ監督の限界なのかしれません。

選ぶのではない、選ばれるのだ

　キャメロン･クロウ監督の自伝的な映画『あの頃、ペニーレインと』の中で、音楽評論家が、『すべての芸術作品は、人が選ぶんじゃない、作品が人を選ぶんだ！』というセリフが出てきますが、職業や環境なども同じなのかもしれません。個人の才能や人間性にふさわしい職業、環境が私たちに用意され、必要な試練によって成長しているのかもしれませんね。自分の職業や環境に不満を持っている人も多いと思いますが、それも一つのステップで、人間的に成長した時に、新たな道が待っているのかも？

未来に疲れてしまった

　未来を予知する事のできるアガサは、自らの欲望によって愚かな行動をする人間の未来を見る事に疲れきっています。未来を予知できる人や、他人の真意を知る事のできる能力を持つ人は、稀ですが、未来を知ったり、人の本音を知る事ができたら、苦しくて生きて生けなくなるような気がします。

トヨタのＣＭ

　近未来型のレクサスのＣＭが挿入され、来型のデザインを楽しめるのはいいんですが、商業的な宣伝の匂いがプンプンして、いやらしい感じがします。

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