1978年アメリカ作品。監督は、『シン・レッド・ライン』『ニューワールド』のテレンス・マリック。主演は、『愛と青春の旅立ち』『コットンクラブ』のリチャード・ギア。大恐慌下のアメリカ、大金持ちの地主とジプシーの恋愛、三角関係などの愛憎劇をベースに人間の原罪を描いた人間ドラマ。
こんなに美しい映画を観たことはない
まるで空を飛んでいるかのような蒸気機関車、地平線まで続く麦畑の四季、大陸的で奥行きのある雲の流れなど、極めて絵画的なセンスで散りばめられている風景の映像美。はじめて聴いた人でも懐かしさを感じさせる神秘的な音楽。この映像美と音楽だけでも十分に見る価値はある。更に、監督の哲学感が強く反映されたセリフ、深い人間洞察による演出。全てが完璧な作品。
大多数の映画評論家からはアメリカ映画史上、最高の作品と評価されながら、以外にこの作品の知名度は低くいようです。、アメリカの『タイム誌の選ぶ70年代のアメリカ映画ベスト10』にも選ばれている名作です。見逃している方も多いと思いのではないかと思います。是非一度は見ていただきたい作品です。映画ファンを自認している方なら必見です。
完璧な人間なんていやしない、みんな半分は悪魔、半分は天使だ
人に対して同情や慈しみの心で接すれば、天使のように人を助け、導くこともできますが、怒りに身を任せて行動すれば、悪魔のように残酷な振る舞いをすることもできます。この作品のタイトルは聖書の申命記にでてくる言葉を使用しているようです。また、ビリーとアビーが兄妹と偽る設定も、聖書の創世記をヒントにしていると思われます。この他にもイナゴの大群の襲来があったり、『この世は今に火の海に包まれ、山には火柱が立ち海も燃える・・・』などのセリフがあり、聖書をベースにした哲学的な脚本と言えるかも知れません。何か懐かしく神聖なものを感じます。
この作品の後、テレンス・マリック監督は約20年間映画を撮りませんでした。再び監督として映画を撮る事になった時、ハリウッドの有名俳優の多くが「出演させて欲しい」と志願したそうです。映画評論家や俳優などから絶大な人気があるエピソードとして有名です。そして期待していた通り、待ちわびた人々が予想もできなかった傑作『シン・レッド・ライン』が1998年に公開されることになります。