悲しい名盤です・・・
1970年発売のビートルズの最後のスタジオレコーディングアルバム。映画『レット・イット・ビー』のサウンドトラックアルバムとして発売されました。元々は『ゲット・バック』というタイトルで製作されていたアルバムだったようですが、仕上がりが悪かった為、一時レコーディングされた音源が棚上げされ、後に、プロデューサーのフィル・スペクターが新たな音源を加えて『レット・イット・ビー』というタイトルで完成させたアルバムです。『アクロス・ザ・ユニバース』『レット・イット・ビー』『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』『ゲット・バック』などの名曲を収録しています。
ビートルズの代表的な名曲が収録されていますが、バンドとしての結束力が弱まって、メンバーのやる気の無さが感じられるアルバムです。映画『レット・イット・ビー』は、レコーディングスタジオでの様子や、屋上でのライブ演奏の模様を淡々と描いた作品で、ビートルズファン、ロックファンには嬉しい作品でしたが、この映画の中でも、ポール、ジョージ、ジョンの3人には、他のメンバーが作った曲に対して全く興味を示さないような、やる気の無さが感じられ、演奏に迫力が感じられません。バンドとしての一体感が失われ、モチベーションが下がった状態で録音されたので、仕上がりが悪いのも当然で、発売が延期されたのも当然のような気がします。こういうテンションの低い状態で録音された音源を、見事にアルバムとして仕上げたフィル・スペクターのプロデューサーとしての能力は素晴らしいと思いますが、気持ちがバラバラになってバンドとして機能しなくなっているビートルズの演奏は、痛々しいほどです。ビートルズファンにとっては、複雑な気持ちになる名盤だと思います。
映画『レット・イット・ビー』は、70年代から80年代にかけてテレビでもよく放送されていましたが、DVDなどでは未だに発売されていません。映画として編集する段階で、メンバー間のトラブルなどの映像は削除されていると思いますが、やはり、険悪な雰囲気が伝わってしまうので、ポール・マッカートニーが発売許可を出さないのかもしれません。