ロックスタンダードを収録した名盤
1963年発売。ビートルズのセカンドアルバム。デビューアルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』がヒットチャートの1位を半年以上独占するという記録的な大ヒットになった為、このセカンドアルバムも、ファーストアルバムが発売された1963年のうつにレコーディングされ、発売されました。『オール・マイ・ラビング』以外のシングルヒット曲は収録されていませんが、カヴァー曲として収録されている『ロール・オーバー・ベートーヴェン』『マネー』などは、このアルバムでビートルズがカヴァーした事によってロックスタンダートとなり、多くのミュージシャンにカヴァーされる事になります。ファーストアルバムと同様にアルバムの半分はカヴァー曲で、ビートルズのオリジナル曲は半分しか楽しめませんが、スタジオライブでレコーディングされたファーストアルバムに比べて、じっくりとアレンジされていて、アルバムとしての完成度は前作より高くなっています。
このアルバムもファーストアルバム同様、ビートルズが敬愛するミュージシャンのカヴァー曲が多くなっていますが、オリジナル曲が足りないというより、ビートルズのメンバーが好きな曲を楽しんで演奏しているという雰囲気が伝わってくるアルバムで、後のロックミュージックに多大な影響を与える偉大なバンド・ビートルズのメンバーも、若い頃は、憧れのミュージシャンの曲をカヴァーして楽しみながらバンド活動をはじめているんだなぁ、と感じさせてくれるアルバムです。アレンジに関しては、プロデューサーのジョージ・マーティンの協力も大きいと思いますが、『ロール・オーバー・ベートーヴェン』『マネー』などは、このアルバムでビートルズがカヴァーしなかったら、ロックスタンダードとして認識される事はなかったんじゃないかと思うほど完成度が高く、『プリーズ・ミスター・ポストマン』は、後にカーペンターズもカヴァーします。ビートルズの映画『レット・イット・ビー』の中では、『ユー・リアリー・ゴッタ・ホールド・オン・ミー』がジャム演奏されているシーンもあり、ビートルズのメンバーのお気に入りだったカヴァー曲を思う存分プレイしたアルバムらしく、かなりテンションが高く、前作以上にメンバー自身が楽しんでいるのが分ります。ただし、ファーストアルバム同様にカヴァー曲が多いので、ビートルズのソングライターとしての才能をオリジナル曲で十分に楽しみたいというロックファンにとっては、ちょっと不満が残るかもしれません。また、1963年発売のアルバムなので音質は相変わらず悪く、古い音源の音質の悪さは覚悟して聴いた方がいいでしょう。ビートルズのオリジナルの名曲を楽しむアルバムというよりは、ビートルズの音楽的なルーツを、ビートルズの演奏センス、ヴォーカルで楽しむスタンダード集として楽しんだ方がいいかもしれません。
ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、チャック・ベリーの『ロール・オーバー・ベートーヴェン』、バレット・ストロングの『マネー』は、オリジナル曲よりもビートルズのバージョンが有名になってしまいました。作曲者には多大な印税が入ったでしょうし、ロックスタンダードとして多くのミュージシャンがカヴァーするようになったので、ビートルズに感謝したいですね。私もバンドをやっていた頃は、『マネー』をよく演奏しました。シンプルな曲ですが、ドライブ感がありコンサートのエンディングなどで演奏すれば、必ず盛り上がるので、アマチュアミュージシャンにとっては、ありがたい曲でした。プロ・アマ問わず多くのミュージシャンがプレイした名曲ですが、ビートルズがこのアルバムでカヴァーしなかったら、こんなに有名にはならなかったでしょうね。