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スケアクロウ
 
Scarecrow

●監督
ジェリー・シャッツバーグ

●キャスト
アル・パチーノ
ジーン・ハックマン

■ ストーリー ■

 
 マックスは、刑務所を出所してすぐに、貯金を元手に洗車の仕事をはじめようとピッツバーグへ向おうとしていた。彼が、ヒッチハイクで車を拾おうとしている時に、たまたま近くで同じようにヒッチハイクをしていたライオンという青年と出会う。用心深いマックスは、はじめはライオンを無視していたが、すぐに親しくなり一緒に旅をすることになる。ライオンは、5年前に置き去りにした妻と子供に会う為にヒッチハイクをしていたのだが・・・。

画像安定装置の使い方

■ レビュー ■


 1973年アメリカ作品。監督は『悲しみの街かど』『或る上院議員の私生活』などのジェリー・シャッツバーグ、出演は『スカーフェイス』『ジャスティス』などの アル・パチーノと、『エネミー・オブ・アメリカ』『リプレイスメント』のジーン・ハックマンなど。旅先での出会いで親友同士になった二人の男の友情を描いたロードムービー。アメリカン・ニューシネマの秀作!。

 アメリカン・ニューシネマの主人公と言えば、正義感が強く純粋で不器用なキャラクターが多いですが、この作品で アル・パチーノの演じているライオンは、自分の主義を押し通そうとするタイプではなく、自分の事よりも他人に気を遣うお人よしで、アメリカン・ニューシネマの主人公たちの中でも、最も魅力的で、友達になりたくなるようなキャラクターです。一方、ジーン・ハックマン演じるマックスは、用心深く人間嫌い、しかも暴力的なキャラクターで、その対照的なキャラクターの組み合わせによってストーリーに深みが感じられ、地味なロードムービーにも関わらず、主人公たちに感情移入してストーリーに引き込まれてしまいます。オープニングの絵画的なカットをはじめ、ロードムービーとして映像の美しさも楽しめますし、マックスとライオンの友情は、涙無しには観る事が出来ません。もちろん、時代の流れに取り残されてしまう主人公たちの悲哀、マックスが世間と呼ぶ体制、権力者への嫌悪感なども描かれていますが、男の友情を描いた感動作としてオススメの名作です。また、アメリカン・ニューシネマにありがちな、どうしようもない絶望感に打ちのめされるような終わり方ではなく、マックスのライオンに対する強い友情が、ほんのちょっとだけ希望を与えてくれるエンディングで、観終わった後に後味の悪さが無いものも秀逸です。シンプルで地味目のロードムービーなので、ド派手なアクション作品を好む方には向きませんが、男の友情を描いた作品が好きな方なら絶対に楽しめると思います。

 まだ20歳前後の頃には、それほど印象に残らず、まぁまぁかな?という感じでしたが、人生経験を重ねて実生活で痛い目に遭ってから観ると、どうしようもなく感情移入してしまって泣けてきます。ジーン・ハックマンが演じているマックスは、人間嫌いで世間に対して敵対心を持っているので、『いちご白書』などの主人公と反体制という意味で同じキャラクターですが、 アル・パチーノが演じるライオンは、世間に対する憎悪などは持ち合わせてなく、争いごとを嫌い、人を笑わせ楽しませることが好きなお人よしです。マックスのように暴力的な行動を取って報復を受けるなら、自業自得と諦めもつきますが、ライオンのようなお人よしで悪意の無い人間は、簡単に人を信じることによって裏切られ、その純粋さがゆえに苦しみも大きくなってしまいます。権力者に反発しても痛めつけられ、従順に従っても利用されて裏切られる・・・。どっちにしても、善意のある人間は、悪意のある人間、権力者にイジメられなければならないのかもしれませんね。でも、逆に、自分だけがツライ思いをしているわけじゃない!と考えれば、ちょっと気持ちが楽になるかもしれません。

人を信用しないし、好きにもならん

 マックスは、自分をひねくれ者と認めていますが、多分、生まれつきではなく、人に騙された経験からそうなってしまったんでしょうね。他人を素直に信用する純粋な気持ちは美しいと思いますが、ライオンのように純粋な気持ちの持ち主は、人に騙され利用されてしまいます。あー、俺も昔はライオンのように純粋だったんだけどなぁ、今はマックスと同じだなぁ、なんて感じてしまう人も多いのでは?

笑わせれば怒れない

 すぐに人に殴りかかるマックスに、ライオンが、かかしの物語を聞かせてアドバイスします。気が立っている人間に拳を振り上げればケンカになってしまいますが、ユーモアで相手を笑わせれば争わずに済みそうですね。ライオンの人間性を象徴する言葉であり、この作品のタイトルであるスケアクロウ(かかし)が深い意味を持つ事を実感させてくれます。

昔なじみが散っちまった

 マックスは、昔の仲間に会う為に寄り道をしますが、森だった場所は開発されてしまい、そこに居た仲間は誰一人残っていませんでした。ライオンは、『世間は変わるもんさ、どうしようもない』と、マックスを慰めますが、森がなくなってしまった事よりも、仲間に会えなくなった事がショックだったんでしょうね。



俺一人じゃダメだ

 ショック状態で錯乱して病院に収容されたライオンに、マックスが語りかけるシーン。もう俺とお前は一心同体だと叫ぶシーンには、涙が止まらなくなります。

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DVDにはメイキング映像も収録

 ありがたい事に、DVDには、予告編とメイキング映像が収録されています。古い映画の映像特典は、DVD特典用に撮影された、出演者の近年のインタビューなどが多いですが、この作品の映像特典は、貴重な撮影風景など当時の映像が収録されています。収録時間は短いですが、1970年代の空気が伝わってくるような貴重な映像は、アメリカン・ニューシネマのファンにとっては、お宝でしょう。

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