８０年代を代表するヘヴィメタルの名盤

　１９８２年発売のゲイリー・ムーアのソロアルバム。ヘヴィメタルブームの時期に発売された事もあり、日本で爆発的な大ヒットを記録。日本でのゲイリー・ムーアの人気を決定付けたアルバムです。『思い焦がれて』『夜明けの誓い』『エンド・オブ・ザ・ワールド』などの代表曲の他、フリーのカヴァー曲『ウィッシング・ウェル』も収録されています。

　７０年代にシン・リジィで活躍したゲイリー・ムーアがヘヴィメタルブームのさなかに発表したソロアルバムなので、以前発表したソロアルバム『バック・オン・ザ・ストリーツ』と比べると、ハッキリとヘヴィメタルを意識したサウンドのアルバムになっていて、フュージョン系のサウンドを期待している人には向かないアルバムになっています。参加ミュージシャンは、ギター、ヴォーカルがゲイリー・ムーア、ドラムにディープ・パープルのイアン・ペイス、ベースに元ホワイトスネイクのニール・マーレイ、キーボードにトミー・アイアーというラインナップで、ゲストとして元クリームのジャック・ブルース、ボビー・コールドウェル、モー・フォスターが参加しています。ジャック・ブルースは、ベースではなく『エンド・オブ・ザ・ワールド』でバックヴォーカルを担当、同じく『エンド・オブ・ザ・ワールド』では、ボビー・コールドウェルがドラムをプレイ、ジェフ・ベックとの共演で有名なモー・フォスターは、『思い焦がれて』でベースを弾いています。

　このアルバムは、ゲイリー・ムーアの感情表現豊かなギターも魅力ですが、メロディアスな名曲を収録した事で、ギターヒーローを求めるロックファンだけでなく、幅広いファンに受け入れられました。『明日への旅立ち』『エンド・オブ・ザ・ワールド』『ロッキン・エヴリナイト』などの曲では、ヘヴィメタルファンを狂喜させる激しい演奏を、『夜明けの誓い』『思い焦がれて』『さすらいの日々』などメロディアスな曲は、女性ロックファンにも受け入れられる程、感動的な演奏を聴かせてくれます。そして、フリーの名曲『ウィッシング・ウェル』は、ブルースロックのファンも唸らせるでしょう。ゲイリー・ムーアの人間性なのか、バラード曲では愛する人に対する切ない恋心が生々しく伝わり、ヘヴィな曲では、凶悪な暴走族のような暴れぶりで、その落差に驚かされます。ゲイリー・ムーアは、ギターにしてもヴォーカルにしても感情を込めて表現できるアーティストなので、彼の感性がリスナーに届き、自分の事のように共感を持って曲を聴けるので、曲がカッコイイだけのヘヴィメタルバンドのような軽薄さがありません。そして、何と言ってもゲイリー・ムーアと言えばギターヒーローとしての魅力！『エンド・オブ・ザ・ワールド』のオープニングのギターソロに衝撃を受けた方も多いと思います。今となっては、それほど難しいフレーズでは無い事が分かってしまいましたが、ギターソロのお手本のような攻撃的なプレイは、ヴァン・ヘイレンの『暗闇の爆撃』と並んで多くのギタリストにカヴァーされました。曲のメロディもギタープレイも素晴らしいゲイリー・ムーアの魅力の詰まったアルバムとしてオススメできる名盤です。

　私は個人的は、こういう表現が大嫌いですが、ＮＷＯＢＨＭ（ニューウェーブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル）などと騒がれてイギリス出身のヘヴィメタルバンドなら、日本ではほとんど有名になれるという時代がありました。ガール、デフ・レパード、アイアン・メイデンなどを筆頭に日本でヘヴィメタル系のバンドに人気が出はじめ、ヘヴィメタルブームのさなかに発売されたアルバムでした。ゲイリー・ムーアは北アイルランド出身なので、ＮＷＯＢＨＭのバンドとは分けて考えた方がいいと思いますが、出身地が違うというだけでなく、プロの作曲家顔負けの美しいメロディラインを持つオリジナル曲、ヘヴィメタルファンの期待にこたえるハードなナンバー、そして超人的と言われたギターテクニックを兼ね備えているんですから、ＮＷＯＢＨＭの新人バンドとは明らかに格が違いました。シン・リジィなどでも活躍してキャリアが長いオッサンだったので当然と言えば当然ですが、悲壮感漂うバラード曲の美しさ、それらの曲での泣きのギターは日本人の心に強く訴え、このアルバムは、世界のどの国よりも大ヒットしたように覚えています。ヘヴィメタルが嫌いな人でもバラード曲は気に入ると思います。

　  　

 

■　フォーリング・イン・ラヴ・ウィズ・ユー　■

　ヴォーカルのメロディライン、切ない歌詞、悲恋の苦痛を表現しような悲しげなギターのフレーズ、どれをとっても最高のバラード曲だと思います。今でもこの曲を聴くと泣きそうになります。

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リマスター盤にはボーナストラックが３曲

　８０年代のアルバムなので音質はイマイチ。なのでリマスター盤で購入した方がいいでしょう。リマスター盤には、『思い焦がれて』のリミックスバージョンとインストルメンタルバージョン、オリジナルアルバムには収録されていなかったポップナンバー『ラヴ・キャン・メイク・ア・フール・オブ・ユー』が収録されています。

 

 

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