曲は最高!なんだけど・・・
2008年発売のガンズ・アンド・ローゼズの4枚目のスタジオアルバム。1991年発売の『ユーズ・ユア・イリュージョンT』と『ユーズ・ユア・イリュージョンU』以来、なんと17年ぶりのスタジオ・アルバムです。このアルバムの収録曲、『イフ・ザ・ワールド』は、りドリー・スコット監督の『ワールド・オブ・ライズ』のエンディング曲として採用されました。
バンドのメンバーの不和による訴訟問題、バンドメンバー、プロデューサーの変更などトラブルが多くレコーディングが遅れたのは仕方ありませんが、17年も経てば過去の人になってしまいます。私も待ちくたびれてウンザリしていました。2008年やっと発売ですが、なぜ2008年に発売されたのか?これも訳ありで、日本ではあまり人気がありませんが、アメリカの有名な清涼飲料水の会社ドクターペッパーが、あまりにも発売が遅れているガンズ・アンド・ローゼズの新作発表を揶揄して、2008年も発売されないだろうから、もし、2008年のうちにガンズ・アンド・ローゼズの新作が発売されたら、バケットヘッドとスラッシュ以外のアメリカ人全員に無料でドクターペッパーを配布すると発表、この発言を受けてレコード会社のプロモーションスタッフが、宣伝効果を狙って2008年中に発売するようにアクセル・ローズに圧力をかけて強行発売を決定してしまったという流れです。参考までに、バケットヘッドとスラッシュという二人のギタリストの脱退によって新作の発売が遅れたという理由で、前記の二人は除外されているそうです。まぁアホらしいです。
1980年代後半から、1990年代前半に世界で最も人気のあるロックバンドとして最盛期を迎えたガンズ・アンド・ローゼズですが、アクセル・ローズと他のメンバーとの衝突から、まず、イジー・ストラドリンが脱退、スラッシュ、ダフ・マケイガン、マット・ソーラムまで脱退し、オリジナルメンバーは、アクセル・ローズのみになり、実質的にアクセル・ローズのワンマンバンドになってしまい。プロデューサーのマイク・クリンクもレコーディングから離れてしまい。メンバー交代などもあり前作から17年もかかってしまいました。アクセル・ローズがアルバムの完成度に納得がいかずに発売が遅れたらしいですが、聴いてみて、なるほど納得です。意外と言っては失礼ですが、収録曲はどれも名曲で捨て曲無しの名盤になる素材ばかりです。しかし、バンドの演奏がつまらないし、楽器の演奏に個性もなく音も良くない、プロデュース能力の欠如がハッキリ作品に表れてしまっています。まるでラフミックスのテープのままという状態で発売されてしまったような印象のアルバムで、賛否両論と言われていますが、アクセル・ローズ自身が不満を持っていたの間違いないでしょう。どうせなら、ヴォーカル以外をスラッシュ、イジー、ダフ、マットというメンバーで全部録音しなおした方がいいのでは?というのが正直な感想です。
曲は本当に素晴らしいですし、ガンズ・アンド・ローゼズらしいギターのリフも多いので、私も結構聴きこんでいますが、惜しいですね。アクセル・ローズのワンマンバンドになって、プロデュースもしていたようなので、アレンジにも口を出していたメンバーの演奏が制限されていたんでしょうか?あるいは、メンバー自信にイマジネーションが欠如しているのか?とにかく演奏がつまらない。ぎたーやベースのフレーズも印象に残るフレーズがほとんど無く、ドラムは小さくまとめすぎで、スケールの大きいノリが無いので迫力に欠けます。マット・ソーラムも個性的なドラマーというわけではありませんでしたが、ハードロックバンドに最適なスケール大きいノリを生み出し、スタジアムクラスのライヴにふさわしいスケールの大きな風格のあるドラミングでガンズ・アンド・ローゼズのサウンドの土台を作っていましたが、それに比べると小物ぶりが目立ちます。多分、アクセルに逆らわないからメンバーとして残っているんだろうというレベルです。ベースも同様で、意外性のあるプレイは無いしグルーヴ感も個性も平均以下という感じです。で、一番気の毒なのがギタリストで、スラッシュのプレイと比べられてしまうという厳しい価値基準があるので大変だと思いますが、こちらも平均的なプレイでフレーズがつまらない以上に、やる気が無いのが音質に表れていて、ちょっとイライラしますね。アルバムタイトルが、『チャイニーズ・デモクラシー』なので、中国的なフレーズが散りばめられていますが、残念な事に、この中国風フレーズがが曲を台無しにしてしまっている部分が多く、このフレーズさせ無ければ名曲なのにな・・・というアレンジミスも残念です。
なんか文句ばかりになってしまいました。でも曲はいい曲ばかりなので、かなり聴いています。17年も待たされた訳ですから、やっぱり嬉しいです。東京でプロを目指してバンド活動をしていた時、ガンズ・アンド・ローゼズにシンデレラの音楽性を足したようなバンドという音楽コンセプトで活動していたので、もう個人的には、一番好きなバンドでしたらか、多少不満はあっても、愛聴盤です。でも、17年の年月が過ぎて私も成長し、若い頃に共感できたアクセルの歌詞のいくつかは、子供っぽい独りよがりに聞こえるようになりましたが、それでも本作での歌詞の多くは、アクセルの人間的な成長が感じられ、久しぶりに再会した友人が人間的に成長していて驚かされ、感激するような喜びさえ感じます。バックの演奏は酷いですが、聴き続けると思います。