1968年、このアルバムより先に、第一期ジェフ・ベック・グループのデビューアルバム、『トゥルース』が発売されています。ブルースをベースにしたヘヴィなロックに、ブリティッシュ・トラッドを取り入れたアコースティックな曲を加えたアルバム構成は、この『トゥルース』に酷似しています。しかも『トゥルース』でジェフ・ベックがカバー曲として収録した「You
shook me」を、このアルバムで取り上げられているのは偶然ではないと思われます。このアルバムを聴いたジェフ・ベックが「アイディアを盗まれた、どうして自分のアイディアで勝負しないんだ」と悔し泣きしたという話は、かなり有名なので、ご存知の方も多いと思います。聴き比べてみると、アルバムの構成は、ほとんど同じで、盗まれたと言われても仕方ないでしょう。近年、ジミー・ペイジがブラック・クロウズと共演したライブ・アルバム「ライブ・アット・ザ・グリーク」では、「シェイプス・オブ・シングス」をジェフ・ベック・グループのアレンジのままプレイしている事からも、ジミー・ペイジは、ジェフ・ベック・グループのデビューアルバムを、かなり気に入っていたのではないかと想像する事ができます。このジミー・ペイジのパクリぐせは、次の「レッド・ツェッペリンU」でも発揮される事となります。
世界一のロックドラマーの登場
セールス的にも、アルバムとしての評価も、このツェッペリンのデビューアルバムの方に軍配が挙がった事は周知の事実ですが、決定的な評価の違いとなったのは、プロデュースによる音質の差とドラマーの実力差ではないかと思います。このアルバムが発売された当時、私は小学校にも入学していない年齢だったので、リアルタイムでの評価は実感できませんが、当時のドラマーは、このアルバムの1曲目のドラムプレイに、かなり衝撃を受けたようです。一般のロックファンには勿論、プロのミュージシャンにも注目されたアルバムだったわけです。プロデュース面では、次に発売される「レッドツェッペリンU」と比べると、かなり荒削りな音質ですが、「トゥルース」のグループサウンズ丸出しの音質と比べると、格段に音も良く、ジミー・ペイジのプロデューサーとしての才能の高さを感じられると思います。
リフの強いハードロック・ナンバー「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ」、「コミュニケーション・ブレイクダウン」、ツェッペリンの音楽性を象徴するような「幻惑されて」、白人ブルースの典型的な作品「君から離れられない」「ハウ・メニー・モア・タイムズ」、ツェッペリンのアコースティックナンバーの名曲「ゴナ・リーブ・ユー」など、名盤と呼ばれるにふさわしい名曲の数々が収められ、今聴いても、新鮮な感動を与えてくれます。2週間程度でレコーディングしてしまったというだけあって、荒削りではありますが、スタジオジャムのような生々しさがあるのも魅力です。