『ブラック・ドッグ』『ロックンロール』『天国への階段』を収録し、レッド・ツェッペリンのアルバムの中でも、レッド・ツェッペリンUと並んで最も人気の高い作品ですが、有名な曲が多く含まれているということ以上に特長的なのは、アルバム全体が異様な空気で満たされているということです。まるで、何処からとも無く、煙のように現れるようなギターの効果音ではじまり、エンディング曲の最後は、何の前触れも無くパッと姿を消してしまうかのようなキーボードの音で締めくくられています。
ジミー・ペイジのオカルトや、中世への関心から、レッド・ツェッペリンのサウンドにも、こういう空気がもたらされました。このアルバムを聴いていると、まるで異空間に迷い込んでしまったような気分に満たされます。特に3曲目の『限りなき戦い』から『
レヴィー・ブレイク』までの流れは、目を閉じて聴き続ければ、深く異空間へ沈み込み、現世から離れられるような魔力を持っているように感じます。ある意味では、瞑想しているような気分で音楽を楽しめるアルバムといえるかもしれません。
悪魔の声が聞こえる?
オカルト的な傾向があるとして、一部のキリスト教信者から批判され、アルバムを逆回転させると悪魔の声が聞こえるという噂もありましたが、実際にそういった事実は無く、レッド・ツェッペリンのメンバーも呆れていたらしいですが、こんな噂も、このアルバムへの関心の高さを表している証明と言えるかもしれません。
アルバムジャケットも、前3作と比べて劇的に変化しています。レコード会社が大反対したらしいのですが、アルバムジャケットのどこにもバンド名、アルバムタイトルも印刷されていないという前代未聞の形で発売され、ダブルジャケットで、ジャケットを開くと全く違うヴィジョンが現れます。はじめてこのアルバムジャケットを見たときの印象は、ハードロックバンドなのに、随分と地味なデザインだな、というのが正直な感想でしたが、家に帰ってダブルジャケットを開いたときには、子供ながらに凄い衝撃を受けました。ジャケットを広げる事により、一気に空間が広がり、ジャケットアートの意味が分かるような仕掛けがされていたのです。まだ、このアルバムを手にとって見たことのない方には、ジャケットのコンセプトも是非楽しんでいただきたい名盤です。