サウンドトラックを越えた名盤!
1985年発売、『スクリーム・フォー・ヘルプ』という映画のサウンドトラックアルバムですが、レッド・ツェッペリン 解散の4年後に発売された事もあり、日本では、ジョン・ポール・ジョーン ズのソロアルバムと紹介されていました。映画の為の音楽という事もあり、全9曲中、インストルメンタルナンバーが3曲、ヴォーカルの入った曲が6曲で構成されています。全曲のアレンジとプロデュースは、ジョン・ポール・ジョーンズ が担当、ゲストミュージシャンとして、ジミー・ペイジ (元レッド・ツェッペリン )、ジョン・アンダーソン(元イエス)、ジョン・レンボーン、コリン・グリーン、グレアム・ワード、マデリン・ベルが参加しています。映画の為の音楽という制約があるにも関わらず、ジョン・ポール・ジョーンズ のアレンジャー、プロデューサー、ベーシストとしての才能が十分に発揮されたアルバムで、レッド・ツェッペリン のファンでなくても満足できる名盤だと思います。レッド・ツェッペリン 風の強烈なリフで構成されたヘヴィな曲、思わず一緒に歌いたくなるようなポップな曲、さらに、ジャズスタンダード風のバラードまで楽しめる名盤ですが、特にベーシストにとっては、色々と勉強になるアルバムだと思います。このアルバムのメロディアスなベースラインを聴いていると、ベーシストでない人でも、ベースを弾きたくなってしまうかもしれません。
主なゲストミュージシャンの参加曲としては、ジミー・ペイジ が1曲目、3曲目と4曲目、ジョン・アンダーソンが3曲目と7曲目、マデリン・ベルが6曲目と9曲目に参加しています。また、2曲目と8曲目では、ジョン・ポール・ジョーンズ のリードヴォーカルを聴く事ができます。ジミー・ペイジ にの参加曲に関しては、『チューニング狂ってるんじゃないの?』という感じの、良くも悪くも個性丸出しののプレイなので、すぐ分りますし、ジョン・アンダーソンの声色も個性的なので、すぐに分ると思いますが、このアルバムで最も存在感のあるヴォーカルを聴かせてくれるのはマデリン・ベルのヴォーカルです。ヒットシングルを狙えるようなポップなメロディにセクシーなベースラインがからむ6曲目の『テイク・イット・オア・リーヴ・イット
』、まるで昔から聴きなれていたような懐かしさを感じさせてくれるスタンダード風の『ヒア・アイ・アム』の2曲は、特に秀逸で、この2曲を聴くだけでも、このアルバムは価値があると思います。
レッド・ツェッペリン?知らない・・・
インストルメンタルナンバーに関しては、リズムマシーンでドラムパートが録音されていて、エレドラの音なども入っているので、打ち込み音の嫌いな方はイライラすると思いますが、無機質なリズムマシーンのビートでも、ジョン・ポール・ジョーンズらしいポップなベースラインが十分に発揮され、パーカッション、リズムアレンジなどのセンスの良さは、ベースやドラムをプレイしている方にとっては、参考になるというか、ショックを受けるほどかもしれません。また、リズムマシンで録音されたドラム以外は、ナショナル・ユース・ジャズ・オーケストラのドラマーであるグレアム・ワードというドラマーが担当していますが、このドラマーが凄い!ジャズドラマーらしいテクニカルなプレイと大胆なアイディアで、このアルバムの曲に躍動感を与えていてます。特に4曲目の『クラックバック
』では、ジョン・ポール・ジョーンズ やジミー・ペイジにも負けいないような存在感のあるプレイを披露しています。グレアム・ワードというドラマーは、ジャズ系の若いドラマーで、このアルバムに参加するまでは、レッド・ツェッペリンもジョン・ポール・ジョーンズ も知らなかったという、レッド・ツェッペリン のファンや、ジョン・ポール・ジョーンズ にとっては、苦笑してしまうようなエピソードがありましたが、レッド・ツェッペリン に影響を受けていないからこそ、フレッシュな感性で、このアルバムに独自のドライブ感を与えてくれたのかもしれません。