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男はつらいよ・フーテンの寅

シリーズ3作(1970年)

●監督
森崎東

●キャスト
渥美清
倍賞千恵子
新珠三千代
香山美子

■ ストーリー ■


 柴又に帰ってきた寅さんに縁談が持ち上がるが、結局破談になり、おいちゃんと喧嘩になった寅さんは、また旅に出てしまう。旅先でお志津さんという温泉宿の女将にに惚れてしまった寅さんは、番頭としてマジメに働きはじめるのだが・・・。

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■ レビュー ■

 

 1969年日本映画。監督は『時代屋の女房』の森崎東。出演は、渥美清、倍賞千恵子、新珠三千代、香山美子など。日本を代表する長寿シリーズ『男はつらいよ』の3作目。

 脚本には、山田洋次さんも参加していますが、シリーズ3作目で、監督が森崎東さんに変わっています。『男はつらいよ』シリーズ初期の作品らしく、荒っぽく威勢のいい寅さんの口上や暴れっぷりが楽しめる作品で、見合い相手の不幸な話を聞き復縁に一肌脱いだり、惚れた女将の弟の恋愛を助けたりと大活躍です。主演の渥美清さんは、本作のマドンナ役の新珠三千代さんの大ファンだったようで、共演できた喜びからか前2作に比べてもかなりテンションが高く、渥美清さんのエネルギーが満ち溢れた作品になっています。寅さん本人の恋愛よりも、お志津さんの弟の駆け落ちを助ける場面が最大の見せ場になっていて、寅さんの恋愛が弱い事と、ロケ地の美しい風景の映像が少ないのが残念です。また、テレビ喜劇を思わせるコメディになっていて、シリーズのほとんどを監督している山田洋次の作品に慣れている方には、ちょっとだけ違和感があるかもしれません。

 『男はつらいよ』シリーズ初期の作品は、寅さんの若き日の威勢の良さが楽しめますが、シリーズ中期の落ち着いたイメージが好きな方にとっては、かなり違和感があるかもしれません。テーマ曲の歌詞にもあるように、庶民に親しまれるキャラクターとは言え、ヤクザの物語なので、乱暴なセリフ、ケンカ腰の態度などは仕方がありません。寅さんと同じような仕事をしている人や、自分が同じタイプの人間と自覚している人にとっては違和感は無いと思いますが、堅気の人にとっては、ちょっとヒヤヒヤするシーンが多く、荒っぽい男が苦手な人には抵抗があるかもしれません。本作では、寅さんが、妹さくらのダンナ博にぶっ飛ばされるなど、以外にケンカが弱い事が判明しているので、安心した人と、ガッカリした人がいるかもしれません。

イヤとは言えない性分よ

 この作品の中では、口から出まかせですが、困っている人の頼みごとを断れない人情の厚いキャラクターが寅さんの最大の魅力です。こういう情に厚いタイプの人間は、人に騙され易く、利用されて貧乏くじを引く事も多いですが、こんな人だからこそ、みんなに愛されるんでしょうね。

貧乏人が一番ツライのはな、金持ちに札束でほっぺたぶっ叩かれるときだ

 貧乏しても幸せな人はいますが、お金が無いばかりに苦労することも多いのが、世の常です。汚い事をした金で貧乏人をいじめるような奴は赦せませんが、こればかりは、いつの時代も変わらないような気がします。

こいつを担いで俺、一生歩くんだ

 染奴さんを連れて東京に逃げる信夫は、荷物を持たずに出発します。愛する女さえいれば何もいらない、愛する人の為に一生を捧げるんだという信夫の気持ちが、この言葉に表れています。今は、簡単に離婚してしまうカップルも多いですが、昔は、こんな気持ちで結婚したんですよね。


 

名シーン

今は嬉しくって泣いているんだ

 親の借金の為に、妾になる決心をした染奴ですが、信夫と結婚したい!妾になんかなりたくない!と本音を父親に打ち明けます。娘が自分の犠牲になることを苦にしていた父親が、うれし泣きするシーンが最高です。あえて厳しい言葉で二人を勇気付ける寅さんの心意気もいいですね。

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ガイド

例外的な作品

 『男はつらいよ』シリーズの監督と言えば、もちろん山田洋次監督が真っ先に思い浮かびますが、初期の3作目と4作目は、脚本で参加しているものの監督は、3作目は森崎東監督、4作目は、小林俊一監督で製作されています。この時期は、他の映画の撮影で山田洋次監督が多忙だった為に、代わりの監督になっているようですが、寅さんの強烈なキャラクターは、誰が監督しても変わらないので、3作目と4作目の出来が極端に悪いわけでは無いのでご安心ください。

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