1969年日本映画。監督は『学校』『息子』『幸福の黄色いハンカチ』の山田洋次。出演は、渥美清、倍賞千恵子、東野英治郎など。日本を代表する長寿シリーズる『男はつらいよ』のシリーズ2作目。
日本全国のファンの要望に答えて映画化されてヒットした1作目『男はつらいよ』は、当初は続編の予定は無く、完結したと考えてもいい作品ですが、この作品では、寅さん恩師との再会、実の母親との再会の物語をを軸に、二番煎じで無理なストーリー展開という違和感も無く、前作同様に爆笑コメディ作品として、感動のドラマとして楽しめる作品になっています。本作ではじめて登場する寅さんの母親役でミヤコ蝶々が出演していますが、お互い口が達者な二人のやりとりが最高で、口が達者なのは、この母親の遺伝なのかな?と思ってしまうほどリアルに演じて笑わせてくれますし、寅さんの相変わらずのおバカぶりも最高に笑えます。1作目では、恋愛、親子の愛情などをコメディタッチで描いて、娯楽作品として楽しめる内容に徹していましたが、本作では、寅さんの恩師である坪内先生のセリフに、人間の悲しみなどに関する哲学的な言葉や、ちょっと頭がいいだけの人間が、悪事を働いて金を稼ぎ、偉そうな顔をして生きているような世の中を風刺した言葉などもあり、娯楽作品としてだけでなく、人生や、世の中の現実について考えさせられるような深みがあり、寅さんと母親の再会シーンで、母親が経営しているラブホテルに、聖母マリアと幼きキリストをデザインしたステンドグラスがあるのも、親子の情愛の美しさと悲しさを象徴しているようで印象に残ります。病院に入院するシーンでは、テキ屋がサクラを使って儲ける方法を披露したりして、チンピラ丸出しの荒っぽい面が目立つ作品なので、女性の方は、1作目同様に、寅さんに対して怖いイメージを持ってしまうかもしれませんが、娯楽作品としても、深みのある感動作としても、1作目に負けないほどの名作だと思います。
1作目があまりにも良かったので、2作目には期待していませんでしたが、ある意味では、1作目以上の作品です。寅さんの恩師である坪内先生の言葉には、色々と教えられることが多く、寅さんが御前様に怒鳴られるシーンでは、自分が怒られているような気持ちになってビックリしてしまいます。今の時代では、この作品に出てくる坪内先生や、御前様のように厳しく諭してくれる人は少なくなってしまったような気がします。説教がましい作品ではありませんが、深く反省させられるシーンが多く、心に残る作品です。
人間というものが、再会するのは甚だ難しい
寅さんと再会した坪内先生が、しみじみと語ります。仕事や家庭の事情で郷里を離れたりすると、懐かしい友人や恩師に会うのは難しくなりますし、偶然誰かに再会するというのは、奇跡のようなものです。忙しさの為に、人に会うのを先延ばしにしたりすると、その人が亡くなってしまう事もあります。友人、知人との偶然の再会はもちろん嬉しいですが、友人や恩師などの住所を知っているなら、元気なうちに訪ねておいた方がいいですね。そんな気持ちにさせてくれる言葉です。
この世は悲しいなぁ
寅さんの母親は、訳があって寅さんを残して去っていきました。この作品では、詳しいいきさつについては説明されていませんが、坪内先生は、それを悟っています。事情があって愛する人と別れなければならないのも悲しいですが、誤解から相手を憎んでしまうのも悲しいです。悲観的な考え方かもしれませんが、この世は、本当に悲しいところなのかもしれません。
先生、もっと叱ってください
寅さんは、坪内先生が、自分の事を考えて叱ってくれる事を知っています。誰かに怒られたり、非難されると楽しい気分にはなれませんが、叱ってくれる人の方が、自分を心配してくれているんですよね。叱ってくれる人に逆ギレしたりすると、せっかく心配してくれている人を傷つけてしまいますし、大体は間違った方向に進んでしまいます。叱ってくれる人には感謝しなければいけませんね。